プロフィール

福田 健二

福田 健二

FUKUDA Kenji

専攻 森林科学専攻 Department of Forest Science
研究室 森林植物学研究室 Laboratory of forest botany
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

森林と樹木の健康を守るための植物学

 世界各地で都市化、農地開発等による森林面積の減少、残存樹林の孤立・断片化や、温暖化、大気汚染などの環境ストレスによる樹木の衰退枯死、グローバル化に伴う侵入病害の流行など、森林生態系へのさまざまな脅威が報告されています.
 そこで、森林植物学研究室では、森林および樹木の健全性の維持を目的として、以下の研究を行っています。
1)森林における植物および微生物の生態に関する研究:古典的な群落(毎木)調査や環境調査に加えて、DNAによる親子鑑定の技術を用いた植物や菌類の繁殖様式の研究、都市近郊林の希少種の保全のための研究などを行っています。
2)樹木個体の健全性とストレス応答に関する研究:世界唯一の樹木用MRIを開発し、樹木の乾燥ストレスや感染に対する反応を研究しています。
3)樹木と微生物の相互作用(腐生、寄生、共生)に関する研究:マツ枯れやナラ枯れのような樹木の病虫害の研究や、倒木の原因となる街路樹の腐朽被害、樹木の根と共生するマツタケなどの菌根菌の研究などを行っています。

教育内容

森と樹木をめぐる生物の多様性と機能を知る

 駒場生向けオムニバス講義「森の生物学」や、農学部共通科目のオムニバス講義「生物の多様性と進化」を通じて樹木と菌類について紹介し、森林生物科学専修および森林環境科学専修の専門科目として、森林に生育する植物や菌類の生理、生態に関する基礎から応用までを学ぶ「森林植物学」、「樹木学」、「森林生態学」、「樹木医学」、大学院では「森林植物学特論」、「樹木生理学」、「環境植物学」、「森林生態学特論」、「樹病学」を開講しています。
 森林生物科学専修および森林環境科学専修の学生は、他の研究室と共同して行っている「森林科学基礎実習」、「森林生物科学実験」などの室内実験および演習林での野外実習を通じて、日本の主な樹木の種類を知るとともに、森林に生育、生息する動植物と微生物の生態について学びます。
 当研究室では、森林と樹木の健全性に関わる研究者、森林の保全や都市樹木の維持管理などに携わる公務員や緑化技術者を養成するとともに、社会の多様な分野で活躍する駒場生や農学部生に、講義や実習などを通じて、「みどり」に関する基礎的な知識や最先端の課題について知っていただき、自然と調和した社会の発展のために貢献する人材となってくれることを願っています。

共同研究や産学連携への展望

樹木の生理診断を可能にする新たな技術を求めています

 樹木の生理および病理について、光合成蒸散測定やクロロフィル蛍光などの個体レベルや葉レベルでの生理状態の測定、MRIやマイクロX線CTなどの非破壊観察手法を用いた幹内部の反応の観察、道管内の水を凍らせて観察するクライオSEM、細胞レベルの反応を見る組織化学染色など多様な手法を用いて、研究しています。 樹木の生理状態や樹木病害のメカニズムを明らかにするためのさまざまな研究手法の開発に取り組んでいますので、技術をもつ企業のご協力をお待ちしています。
 これまでに、筑波大学およびMRテクノロジー社との共同研究を通じて樹木用MRIの開発とその水分生理学的研究への応用に取り組んできました。樹木の水分通導を明らかにするためには、高解像度のマイクロX線CTによる幹内部の非破壊観察が有用ですが、樹木の苗は観察したい部位(幹)の直径が小さいにもかかわらず1m程度の高さがあり、通常の高解像度CTの試料室には入りません。縦長の大型試料室を備えた高解像度CTの開発が待たれます。
 また、街路樹の危険度診断や野外樹木の病害診断など、高木の幹内部や地下部の根系を非破壊観察する手法も、社会的ニーズと技術開発の余地が大きい分野です。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  森林、樹木、生理、生態、ストレス、寄生、共生、病害、MRI、非破壊観察、樹木医
キーワード2  :  森林衰退、森林保全、樹木保護、病害、緑化、樹木診断、樹木治療