プロフィール
専攻
生圏システム学専攻
Department of Ecosystem Studies
研究室
緑地創成学研究室
Laboratory of Landscape Ecology and Planning
職名
教授 / Professor
一般の方へ向けた研究紹介
自然の恵みを理解し、保全・活用する
私たちの生活は、自然がもたらすさまざまな「めぐみ」により支えられています。これには、農産物、木材のような物的な便益もあれば、森林による炭素固定を通じた気候調節、森林や農地による地下水の涵養、河川流量の安定化、さらには美しい景色、自然の中での教育やレクリエーションなどの非物的な便益も含まれます。専門的にはこれらの自然がもたらす多様なめぐみを総称して「生態系サービス」と呼びます。残念ながら、私たちの社会経済活動は多く場合、経済的利益を重視し、食料や木材、エネルギーなど、短期的に自然から得られる物質的な便益を優先する一方で、市場外にある生態系サービスの存在や価値を見過ごす傾向にあり、それが地球規模での気候変動や生物多様性の低下を引き起こしています。私たちの研究室では、自然がもたらすさまざまな生態系サービスが「どこに、どのくらいあるのか?」、「それらはわれわれにとってどのような価値を持つのか?」、また「それらサービスが将来どのような変化(増加、減少)を遂げる可能性があるか?」を研究しています。
教育内容
生物多様性・生態系サービスとプランニングに興味のある人材を求む!
気候変動とならぶ地球規模の環境危機の一つである生物多様性や生態系サービスの低下が進む現在、緑地環境の修復・保全・創出に貢献できる人材の育成を目指しています。また、研究者や実務者という括りにこだわらず、科学と政策を橋渡しできるナレッジ・ブローカーの育成も目標としています。
学部学生向けの講義「自然共生社会論」では、生態系サービスを将来にわたり享受できる自然共生社会の構築に必要な基礎知識の習得を目標として、日本や諸外国の生態系サービスの現状や評価の方法、関係する国際的枠組み、国内の政策や計画・事業等の制度や実際の取組みについて、計画論的な視点から授業を行っています。
研究面では、生態系サービスの可視化評価、シナリオ分析を用いた将来の土地利用・生態系サービスの予測評価、自然が持つ多様な価値のうち特に未解明な部分の多い関係価値の評価に力を入れて、卒業・修士・博士研究の指導をしています。
卒業・修了生は、環境省、国土交通省などの官公庁、地方公共団体、シンクタンク、環境コンサルタント、金融機関などに就職しています。
共同研究や産学連携への展望
土地利用・生態系サービスの可視化・将来予測を通じた意思決定の支援
行政や企業等のさまざまな政策・意思決定の局面で、科学的な根拠が求められています。また、企業経営では、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)、SBTs for Nature(自然のための科学的根拠に基づく目標設定)など、経済活動における自然環境や生物多様性に関するリスクや機会の評価や情報開示の重要性が高まってきています。
私たちが進めている地理情報を活用した生態系サービスの可視化や土地利用・生態系サービスの将来シナリオ分析は、不確実性が高く将来の予測が困難な「VUCA」の時代に、行政による政策介入(例えば、土地利用規制の変更)や企業活動(例えば、大規模な土地開発)が対象地や周辺地域の土地利用に与える潜在的な影響の評価や、より介入効果の大きい(あるいは環境影響の少ない)選択肢の絞り込みを支援できます。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 生態系サービス、土地利用・被覆、土地利用計画、農業・環境政策、シナリオ分析
キーワード2 : 持続可能な開発目標(SDGs)、生物多様性、自然を活用した解決策(NbS)、気候変動、気候変動適応、