プロフィール

伊藤 公一

伊藤 公一

ITO Koichi

専攻 食と生体機能モデル学寄付講座 Laboratory of Food and Physiological Models
研究室 食と生体機能モデル学研究室 Department of Food and Physiological Models
職名 特任准教授 / Project Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

脳の老化は怖くない!

 高齢社会の到来に伴って、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間、すなわち健康寿命の延伸が重要な課題となってきています。我々や動物の脳が加齢に伴って機能的にどのように変化していくのか、正確にはわかっていません。これまで我々のグループは老化促進モデル動物などを用いてシナプス機能、特に記憶・学習の基礎課程であると考えられている海馬神経細胞のシナプス可塑性の加齢性変化を詳細に検討しています。同時に、老齢動物の行動の変化などを検討することにより、認知症の起こるメカニズムを多角的に理解しようと日々研究しております。また、加齢性に低下するシナプス活動を「食」によって改善することも目標としており、脳機能改善に効果的な栄養素の探索にも取り組んでいます。最近ではさらに脳の活動を生体の外部から観察できる脳波測定を行い、脳機能の加齢性変化を検出することによって、認知機能の低下を未然に診断し、認知症の予防に役立てることを通じて豊かな高齢社会を実現していきたいと思っております。

教育内容

幅広く活躍できる人材育成と社会貢献を目指してます

 我々のグループは加齢により低下する脳機能をシナプスレベルで理解し、食によるその改善を目指しております。そのため、基本的な神経細胞の形態や振る舞い、さらには脳の構造などの知識は必須です。しかし複雑な脳神経系を正しく理解することは非常に困難なことです。そのため私は講義や実習を行う場合は平易な解説をするだけでなく双方向的なやりとりを通じて理解を深める助けとなるように努めています。さらに普通は行われないような研究室主催での公開シンポジウムをすでに数度行い、一般の方にもわかりやすく説明して広く健康寿命について考えていただく機会を設けております。研究面で学生やポスドクとテーマを決めるときには一方的な指示ではなく、お互いが納得するまで討論して方向性を決めて研究に取り組んでいます。これを通じて、好奇心を深めて周囲と議論・協力しながら研究を遂行できる人材を育てていきたいと思っております。ラボとしての目標は、こうして得られた知見を積み重ね教科書に新たな1ページを作ることです。これまで卒業生は大学や研究機関における研究職、製薬・食品会社、空港の検疫官、さらにはベンチャー企業など多岐にわたり、皆それぞれ組織の中心となって社会に貢献しています。

共同研究や産学連携への展望

幅広いアプローチにより豊かな高齢社会の提供へ

 我々のグループは加齢により低下する脳機能をシナプスレベルで理解し、食によるその改善を目指しております。そのためこれまで大学間の共同研究では前者を、企業や法人との共同研究では後者を中心に行ってきております。具体的にはある食品素材について、電気生理学的/イメージング解析や行動解析を通じて認知機能に対する効果を検討してきました。最近はテレメトリーシステムを用いた無麻酔・無拘束下での脳波解析も行っているため、より自然な状態での脳活動を観察することも可能になりました。また我々の研究室では老化促進モデル動物やアルツハイマー病モデルマウスを始めとした様々な遺伝子欠損動物を維持しており、より適した抗加齢素材研究ができます。今後は現在他の研究機関と共同で行っている人工知能を用いた脳機能解析を応用して食品素材のスクリーニングをより効率的に行うことや効率的な機能解析を導入する予定です。共同研究相手として食品・製薬関係のみならず社会基盤システムを評価できる工学系の企業との共同研究も希望しており、幅広いアプローチにより豊かな高齢社会を提供できるよう発展させていきたいと考えております

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  脳、記憶、学習、脳波、シナプス可塑性、画像解析、老化、加齢性変化、栄養
キーワード2  :  高齢社会、認知症、健康寿命、食、機能性食品