プロフィール

一般の方へ向けた研究紹介

硫黄代謝から植物・農業を視る

 生きもののなかで、植物の特徴は何でしょうか?一つの答えとして、植物は動けない、ということがあります。これは、植物が不適な環境―例えば猛暑、強光、乾燥、養分欠乏、毒物、病害虫―から逃げることができないことを意味します。しかし周りを見渡せば、植物は至る所に生えています。では、どうして植物は厳しい環境でも生きられるのでしょうか。ここで注目したいのが「代謝」です。代謝とは、体のなかの物質を作り替える過程です。植物は根から養分を吸収し、光合成で炭水化物を合成し、実に様々な物質を作ります。動けない生物である植物の代謝は特に発達しており、合成した物質は体を作るだけではなく、ストレスの緩和や病害虫からの防御、逆に有益な虫や動物の誘引に役立ちます。また、これらは人にとっても農産物や薬として欠かせないものです。  この代謝を理解することは、植物がどのように生きているか?を理解する一端であると同時に、持続可能な食糧生産に欠かせないものです。私は、代謝のなかでも特に「硫黄」の代謝に注目して研究を行っています。硫黄は植物にとって重要な栄養素の一つであり、体を作るうえでもストレスに耐えるうえでも欠かせないものです。硫黄の欠乏は農業にとって重大な脅威であり、逆に硫黄代謝を理解して上手く制御することができれば、少ない栄養で作物を育てたり、気候変動に負けない植物を作ったり、耕作不適地で農業を行ったり、よりおいしく健康に良い作物を開発したりすることができます。そこで、私は植物の硫黄代謝を理解し、農業生産に応用するため、分子生物学・生理学・生化学的手法を駆使して研究を行っています。

教育内容

「分からない」に立ち向かう力を身に付ける

 科学の勉強は論理で議論が進む爽快感があるように思いますが、いざ研究を始めると、研究の泥臭さ、分からないことの多さ、失敗の多さなどに戸惑うことも多いのではないかと思います。しかし、この「分からなさ」と正面から向き合い打ち込むことができれば、専門知識や技術はもちろん、主体性や論理性、コミュニケーション能力など、進路によらず普遍的に重要な能力が飛躍的に伸びるはずです。これらの能力は、不確実性の時代である現代において、非常に貴重な財産になると思います。そして、研究に打ち込んだ時間は、ある種苦しくも楽しく充実した体験として一生残ると思います。私は研究室の教育において、皆様がこの「分からない」と向き合い乗りこなせるよう、一人一人と向き合ってサポートできればと考えています。
 一方、講義や学生実験では、「栄養・代謝から見た植物観」をお伝えできたらと考えています。何気ない身近な植物のなかにある巧妙な仕組みを知ることは面白く、人生に彩りを与えてくれます。そして、植物の生きざまを理解することは、今後ますます重要になる食糧・環境問題を科学的に考えるうえで、非常に重要な基盤を提供してくれるはずです。

共同研究や産学連携への展望

研究と教育で社会に価値を提供する

 私は植物の代謝研究を農業に応用することを目指しています。具体的には、栄養利用効率の改善やストレス耐性作物の開発、植物における物質生産、あるいはバイオスティミュラントや次世代型肥料の開発に関心を持っています。現在はモデル植物を用いた基礎研究が主ですが、将来的には作物等への応用を見据えています。一方、大学で研究をする課題として、現場感覚をつかみにくいことや、大規模な市場調査をするのが難しいことが挙げられます。そのため、ともすると応用研究を標榜しても既存の研究の延長に留まってしまう、という大きな危険があります。私は、真に社会的に意義のある仕事をするためには、共同研究や産学連携により視野を広げ、真に重要な課題を見極め多角的なアプローチで取り組むことが重要だと考えています。また、大学は研究機関であると同時に教育機関です。私は教育哲学を専門として教育学士を取った経験があることもあり、教育活動やアウトリーチにも是非取り組みたいと考えています。
 もし共同研究や連携に興味のある企業様等がいらっしゃいましたら、是非お気軽にお声がけいただけますと幸いです。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  植物、代謝、栄養、生理、硫黄、抗酸化、環境適応、シグナル伝達
キーワード2  :  食糧問題、気候変動、低投入型農業