プロフィール
専攻 |
水圏生物科学専攻
Department of Aquatic Bioscience
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研究室 |
魚病学研究室
Laboratory of Fish Diseases
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職名 |
教授 / Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
海の恵みをこれからも持続的に利用するため、魚介類の病気と戦う!
研究の背景
世界的に増加する水産物消費は、天然資源だけでは十分に支えることができなくなっており、人工的に増やす『養殖』の重要性が高まっています。しかし、家畜や農業と同様に、養殖でも感染症による深刻な被害が発生するため、安定的な生産には感染症への対策が欠かせません。また、最近では感染症による被害が天然資源や生態系へも深刻な影響をもたらすことも危惧されています。
研究の内容
ヒトが利用する魚介類の種類は家畜と比べて圧倒的に多いため、実態が明らかでない感染症がたくさんあります。また、流通網の発達や養殖産業の拡大により、新しい病気も次々に発見されています。このような中、病気の実態調査や病原体の生態など基礎的な調査から、被害を減らす生産方法の考案や病原体の拡散を防ぐ防疫対策といった応用研究まで、広範囲な研究を行っています。
今後の展望
水中に広まった病原体を根絶することはほぼ不可能ですが、それぞれの感染症について十分に理解することで、被害を軽減する様々なアプローチが可能になると考えています。人類が海の恵みをこれからも享受できるよう取り組んでいます。
教育内容
水圏の感染症を題材として課題解決能力を身につけよう。
教育活動内容
学部では有用水産動物の生理や生態に関する水生動物学、増養殖産業の実情を伝える水産増養殖、および生産被害をもたらす魚病学に関する講義や実習を担当しています。大学院では魚病学に関する専門的知識や技術を伝える科目や、受講者と一緒に感染症に関する課題を考える科目を担当しています。
人材育成の目標
研究対象となる魚病は原因も対象魚種、そして飼育方法も千差万別であるため、病原体、魚種、養殖方法さらには産業構造などを理解した上で、各疾病の解決策を考えなければなりません。そのため、専門的知識に加え、論理的かつ批判的な思考力、生産現場での活動力、さらに成果を普及させる際に必要となる説明力を備えた人材の育成を目指しています。また、新しい疾病が多いことから、過去の知見や経験に囚われない自主的な研究計画の立案と実行も重視しています。
人材輩出の実績
博士課程修了者は、国内外の大学や公設の研究機関で研究者として活躍しています。修士課程修了者は水産関係を含む企業や官公庁などで活躍しています。
共同研究や産学連携への展望
海の恵みを感染症から守る
取り組んでいる社会問題
貝類はエコフレンドリーな食料として重要であるだけでなく、水圏生態系において重要な位置を占める生物でもあります。しかし、国内では各種貝類の生産量や資源量の減少に関与すると考えられる感染症も多く、水産業と水圏生態系への深刻な影響が懸念されます。そこで、貝類と病原体の特性からそれぞれの感染症を理解し、その上で生産方法の改善を提案することで、持続的な貝類生産と豊かな水圏生態系を支えることを目指しています。
現時点での課題に対する成果物や進捗
マガキやアサリの原虫感染症、マガキ種苗やホタテガイの細菌感染症およびアワビのウイルス感染症について、生産現場での実態調査から病原体特性評価といった基礎研究を行い、応用可能な改善策を模索しています。これまでの成果については科学論文だけでなく、一般向けである『養殖ビジネス』等の商業誌にも掲載しています。
今後の進展に適用可能な技術や研究、展望
感染症に対しては決まった戦い方があるわけではなく、病原体や対象生物、さらにはそれぞれの産業背景によってアプローチを変えていく必要があります。病原体や貝類の生理に関する知見の集積や、陸上養殖や種苗生産、育種、餌料開発など生産に関するあらゆる技術開発が解決への糸口になると考えています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 貝類、病原体、ウイルス、細菌、寄生虫、原虫、魚類、増養殖、水産資源、魚病、宿主特異性、生体防御、水圏生態系
キーワード2 : 魚病問題、感染症被害、防疫、水圏生態系の破壊、水産物生産の減少、水産業衰退