プロフィール
専攻 |
水圏生物科学専攻
Department of Aquatic Bioscience
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研究室 |
水圏生物環境学研究室
Laboratory of Aquatic Biology and Environmental Science
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職名 |
准教授 / Associate Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
目には見えない海と人間の関わりを明らかにする
我々は海で魚介類を採集し、それは特に日本の食卓において欠かすことができません。では、そもそも海水中に住む魚の量は何によって決まっているのでしょうか。また、人類は化石燃料を燃やすことと、窒素ガスをアンモニウムに変化させ、田畑にまくことで急激な発展を達成しました。増えた二酸化炭素やアンモニアは目に見えない形で海に溶け込んでいますが、海の環境の変化は、魚介類の量には影響を及ぼさないのでしょうか。私の研究は、直接目で見ることができない、海水に溶けている成分と、それを利用できるプランクトンとの関係を明らかにし、海と人間との関わりについて、食糧生産の観点と地球環境問題の観点のどちらもから明らかにしていくことです。私は、海水中の硝酸イオンやアンモニウムイオンといった植物プランクトンが取り込み、細胞分裂をするのに必要な成分の濃度を測定したり、生物の中にタンパク質などの有機物として保持されている量を測定したりすることで、特に窒素元素の流れに着目した日本周辺海域の海と人間との関わりを明らかにしてきました。将来的にはより広い海で「関わり方」を明らかにするとともに、まだまだ謎が多い海の謎解きを進めていきたいと思っています。
教育内容
海の謎を解き明かしながら、人間的な成長を目指す
私が所属している水圏生物環境学研究室では、3年生の4月に学生実験を担当し、器具の利用方法やデータの取り方といった、実験に関する基礎を習得できるようになっています。さらに7月の実習では、浜名湖で調査を行い、「どのような環境だったか」、「何故そうなるのか」を3年生の中で議論し、発表してもらいます。このようなカリキュラムを通じて、実験技術だけではなく、データの論理的な解釈方法の習得も目指しています。また、研究室配属後は、より先端的な技術を習得してもらうことも必要ですが、それよりも船舶による海洋観測に行き、他の人と協力しながらも自分の手で試料を集め、分析した結果の論理的な解釈をしながら、これまで知られていなかった現象を見つけていくという過程を重視しています。特に、海洋観測は自然に大きく左右されるなど、陸上研究室と比較し、「不条理」です。この「不条理」への理解、すなわち「寛容性」と、その中でベストを尽くせるようする「自律性・自主性」、そして、結果の解釈で得られる「論理的・合理的な思考能力」の全てを身につけて、次のステージに進める人物の育成を目指しています。
共同研究や産学連携への展望
海洋・海水の複雑さの克服
海洋は人類の排出する窒素化合物、炭素化合物の排出先となっています。どこまでも広がるように見える海にこれらが溶けてしまえばその濃度は検出できないだろうと考えられていました。しかし、高感度な分析や長期のデータセットでは、これらの窒素の供給が海洋環境に変化を与えていることが分かっています。一方、排出先というと負の側面が強調されますが、陸域からの適度な量の栄養塩類の供給は、海洋の生物生産の向上につながる可能性が指摘されています。このように海洋環境は複雑であり、また、不均質性が高いため、海洋の現象を理解する上では高度な分析の適用だけでなく、適切な統計処理も重要です。さらに、化学分析において海水は狭雑物が多い難しい対象です。このような海洋学で蓄積されている分析や解析のノウハウは、海洋環境・生態系評価だけでなく、さまざまな場面でも役に立ちます。例えば、我々が開発した栄養塩分析手法については、海水分析だけでなく、土壌の肥料分の測定にも利用されています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 海洋、水産海洋、生物海洋、化学海洋、海洋生態学、栄養塩、窒素循環、炭素循環、プランクトン、食物網構造、魚類生産、亜熱帯海域
キーワード2 : 気候変動、海洋汚染、SDG14