プロフィール
専攻 |
水圏生物科学専攻
Department of Aquatic Bioscience
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研究室 |
水産化学研究室
Laboratory of Marine Biochemistry
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職名 |
助教 / Research Associate |
一般の方へ向けた研究紹介
”生き物”から”食べ物”になるプロセスを明らかにする
毎年、世界中の海で数百万トンの魚が投棄されています.投棄される魚のなかには食べられるものも大量に含まれており、高値で売れないことや食利用の習慣がないことを理由に棄てられています.一方、世界では爆発的な人口増加による深刻な食糧不足が現実味を帯びてきています.これらの問題の解決に向けて、未・低利用資源をおいしく食利用するための研究を行っています.
魚の生体組織としての“骨格筋”が食品としての“魚肉”へ変化するプロセスに関して、タンパク質がどのように分解されるのか、水分やうま味成分がどのように移動・拡散するのか、なぜ食感が変化するのかなど、様々な視点から調べています.おいしさが形成されるメカニズムを定量的に明らかにすることによって、様々な魚種を原料とした際の調理・加工プロセスの最適化が可能になります.蒲鉾や昆布締めなどの日本の伝統的な水産加工食品や新しい調理法であるsous-vide cookingの研究を進めながら、本物の魚肉に近い食感・味をもつ培養魚肉や代替魚肉の実現も目指しています.
教育内容
食を通じた視野の拡張
農学分野における数理的アプローチをオムニバス形式で紹介する「農学現象の数理科学的理解」という科目で、「かまぼこの微分」の講義を担当しています.講義では、かまぼこの加工プロセスにおける魚肉タンパク質の挙動について、実験結果の定量化とシミュレーションの実践を紹介し、微分方程式を用いたかまぼこのゲル化モデルを解説しています.
食品の研究は、生物が食品原料となるまでのプロセス、それらを加工・流通するプロセス、ヒトが食品を味わって消化吸収を行うプロセスなどあらゆる側面から取り組む必要があります.そのため、組織観察やオミクス解析などのいわゆるウェットな研究も行いながら、数理モデルを使ったシミュレーションやアンケート調査解析のようなドライな研究も行っています.また、食品工場への見学や料理人へのインタビューなど産業的な調査の機会もあります.
共同研究や産学連携への展望
職人の勘を科学で言語化する
食品製造は機械化が進んでいますが、細かな部分は製造現場での判断に委ねられています.職人が長年培った経験則に基づいて、攪拌や加熱の時間を決めるというシチュエーションは決して珍しくありません.そのような言語化されていない制御方法について、最先端技術を使って科学的に検証して記述するということにも取り組んでいます.例えば、かまぼこ製造に使用する魚種の混合比および加熱温度と食感の関係を表現する数理モデルを構築し、算出された最適条件は職人が決めた条件に近いものでした.現在はこれを発展させ、異なる条件で製造した際に得られる食感の予測を試みています.
また、食品加工残渣や未・低利用資源の活用にも積極的に取り組んでいます.対象は水産物に限らず、牛肉や豚肉、鶏レバーなどの分析実績もあります.食品製造における手続き的知識や職人の勘(少し熟成させたほうがおいしくなる、など)についての科学的な検証や定量的な解釈に向けて柔軟に協働できると思います.
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 食品科学、食品工学、調理学、食品加工、オミクス解析、数理モデル
キーワード2 : 魚離れ、食品ロス、和食文化の継承、未・低利用資源の活用