プロフィール
専攻 |
附属アグロバイオテクノロジー研究センター
Agro-Biotechnology Research Center
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研究室 |
細胞機能工学研究室
Laboratory of Cell Biotechnology
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職名 |
准教授 / Associate Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
微生物の代謝とタンパク質アシル化修飾との関わりを理解してものつくりに貢献する
発酵食品から調味料や医薬品に至るまで、微生物はさまざまな人の役に立つ物質の生産(ものつくり)に利用されています。我が国では古くから微生物の力を上手に利用して、微生物のバイオテクノロジーを発展させてきました。微生物のものつくりではその優れた代謝(酵素の作用で物質を変換する)能力を利用します。そのためには代謝を制御するしくみを理解することが不可欠です。グルタミン酸発酵に利用されるCorynebacterium glutamicumという細菌を主な対象に、タンパク質修飾の1つであるアシル化修飾(アセチル化やスクシニル化)と代謝制御との関わりを研究しています。この細菌ではグルタミン酸を大量につくる際に代謝の流れが大きく変化します。ここで代謝酵素の存在量は変わりませんが、そのアセチル化とスクシニル化の状態が変化していることを発見しました。アシル化修飾によって代謝がどのように制御されるのかを理解し、有用物質の生産に役立てることを目指しています。
教育内容
タンパク質アシル化修飾から微生物の代謝制御と栄養応答のしくみを理解する
ゲノムから転写・翻訳を経てつくられたタンパク質は、さらに(翻訳後)修飾を受けて与えられた状況に応じた機能を持つようになります。近年のプロテオミクス分野の発展によりさまざまなタンパク質修飾が発見されており、この修飾を含めたタンパク質機能の理解がポストゲノムにおいて重要になってきています。生物に普遍的な翻訳後修飾の1つであるアシル化修飾(主にリジン残基を標的とするアセチル化とスクシニル化)に着目して、微生物の代謝制御や栄養応答との関わりを研究しています。微生物を対象とした実験科学の実習を通して微生物の基本的な取り扱いと性質を学び、未知なる現象の発見とメカニズムの理解、微生物が秘めた潜在能力の発掘とその応用を志向した教育指導を行います。未知の事象に失敗を恐れずに挑戦し、信頼性のある実験データを積み重ねて丹念に考え抜き、説得力のある成果を発信できる人材育成を目指しています。
共同研究や産学連携への展望
アシル化修飾に着目した代謝フロー制御と物質生産への応用
微生物を用いた有用物質生産には代謝制御の理解と改変が不可欠です。グルタミン酸発酵で知られるCorynebacterium glutamicumではグルタミン酸生産時に代謝酵素の発現変化を伴わずに大規模な代謝フロー変化が観察され、翻訳後レベルでの代謝制御の存在が示唆されています。プロテオミクスを主としたアプローチからグルタミン酸生産条件で代表的なアシル化修飾であるアセチル化とスクシニル化が顕著に変化することを見出し、大規模な代謝フロー変化との関わりに注目して研究を進めています。アシル化修飾がタンパク質間相互作用や集合体形成を介して代謝を柔軟に調節するメカニズムの解明を目指しており、これを標的とした代謝フロー制御技術の開発が期待されます。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 微生物、翻訳後修飾、アシル化修飾、代謝
キーワード2 : 有用物質生産、ものつくり