プロフィール

栗田 悠子

栗田 悠子

KURITA Yuko

専攻 附属アイソトープ農学教育研究施設 Isotope Facility for Agricultural Education and Research
研究室 放射線植物生理学研究室 Laboratory of Radio Plant Physiology
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

樹木の輸送をのぞいてみよう

 樹木は数十年〜数千年の時間をかけて成長し、巨大な体を構築する生き物です。巨大な個体を構築・維持するには効率的な資源(光合成産物、栄養素)の獲得能力と、それらを適切な器官へと分配する輸送制御機構が必要です。樹木は大きな体の中で、どのように必要な栄養素を必要な場所へと輸送しているのでしょうか?
 私たちは樹木の輸送機構の中で、季節的な栄養素のリサイクル機構に着目して研究を行なっています。これまでに将来的な資源の枯渇が危惧されているリンについて研究を進め、モデル樹木であるポプラを用いて、春夏に葉に運ばれたリンが秋の落葉前に枝や幹などへ回収・貯蔵され、冬の休眠後、春に再び新芽へと輸送されることを明らかにしました。
 しかし、季節的なリンのリサイクルの研究はまだまだ謎が多く、樹木がどのような分子メカニズムで輸送の方向性を制御しているのかなどは明らかではありません。現在、私たちは野外の樹木と実験室内短縮周年系を用いて、放射性同位体を用いた輸送の可視化・定量や、様々な元素の季節変化の測定、季節的な遺伝子発現変動の解析を進めています。これらの解析を元に、将来的には樹木の経年的な栄養素循環の全体像を解明していきたいと考えています。

教育内容

放射線同位体+多角的なアプローチで

実習について
 放射線植物生理学研究室は3年生向けの放射性同位元素取扱実験を担当しています。放射性同位体は安定同位体に比べて取り扱いが難しくなりますが、生物体内の元素の輸送や分布を可視化・定量できる有用なツールです。実習では放射性同位元素の知識・実験操作や規則を学び、イネなどの植物を用いて吸収された元素がどのように輸送されるのかのイメージング等を行います。
研究室について
 放射線植物生理学研究室には田野井慶太朗教授、小林奈通子准教授、栗田(助教)の3人の教員が所属しています。放射線同位体を用いて水、イオン、低分子化合物などの植物個体内の動態を非破壊で可視化計測する様々な技術を有していることが当研究室の特徴の一つで、これらに加え分子生物学的な実験手法やICP-MSを用いた多元素分析、QTL-SeqやRNA-seqなどの生物情報学的な手法を組み合わせて多角的なアプローチで研究を進めています。研究室には四年生・修士・博士課程の学生が在籍し、モデル植物のシロイヌナズナやイネを用いたMgやZn、Naなどの吸収・輸送・排出機構の研究や、植物以外では放射線とタンパク質の作用に関する研究などを行っています。お茶の水女子大学の学生さんたちも在籍しており、全員が揃うと賑やかな雰囲気です。

共同研究や産学連携への展望

放射性同位体研究のプラットフォームに

 当研究室では植物体における水、イオン、低分子化合物の動態の非破壊可視化計測技術開発が行われており、β 核種(14C、32P、35S など)を定量的に高分解能でイメージングできる装置などを所有しております。福島県の原発被災地における復興に関わる研究・調査も行っており、放射性セシウムのモニタリングや農作物や樹木の放射性セシウム低減を目標とした課題研究を進めています。アイソトープ施設の研究室として国内外のアイソトープ利用のプラットフォームとなることを目指し、学外の方とも広く共同研究を進めておりますので、ご興味があればぜひお問い合わせください。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  植物、樹木、ポプラ、リン、季節、RI、放射性同位体、RNA-Seq、多元素分析
キーワード2  :  環境問題、気候変動、放射能汚染