プロフィール
専攻 |
農学国際専攻
Department of Global Agricultural Sciences
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研究室 |
国際植物材料科学研究室
Laboratory of Global Plant Material Science
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職名 |
講師 / Lecturer |
一般の方へ向けた研究紹介
未利用バイオマスのバインダーレスマテリアル化
木材は環境にやさしい材料でしょうか?答えはYES、時にはNOです。木や植物が、そのものの形のまま、私たちの身の回りで使われることは今やほとんどありません。多くは一度細分化され、再構成されています。紙や、家具・建築に使われる木質ボード類もそうです。その細分化や再構成の過程に環境負荷が発生することにも注意しなくてはなりません。環境にやさしい材料とは、使用中のみならず、その製造過程、さらには使用後の処理過程の環境負荷も含めて考慮されねばなりません。私は、植物が本来持っている成分をうまく活用することで、石油由来の合成樹脂を使用することなく材料化を実現する「バインダーレス接着」の研究をしています。原料としては、農業や工業の過程で生まれる副産物や残渣である「未利用バイオマス」を積極的に活用しています。日本を含め世界中で栽培されている稲の藁や籾、竹等のイネ科植物のほか、マレーシアやエジプトから取り寄せたヤシ類の残渣、野菜や果物の皮などのフードロスにも着目しています。時に植物の個性を生かし、時に均したりしながら、原料処理、マテリアル製造、性能評価、分析という実験を繰り返し、より環境負荷の低い合板や木質ボード、ウッドプラスチック等の実現を目指しています。
教育内容
世界の未利用バイオマスを、物理、化学、生物、すべての知識を生かして、有用な材料に!
未利用バイオマスを用いたバインダーレス材料化を目指す研究は、まずは原料の処理、そしてマテリアル製造、性能評価、化学分析、という大まかな流れに沿って行います。植物の生育や構造を知るためには生物学の知識が必要です。材料の強度を測定する際には物理学が、接着に影響を与える因子を分析する過程では化学が必要です。幅広い知識を総動員させながら、よりより材料を実現するために取り組んでいきます。わからないことだらけの荒野を、分野の垣根を超えながら、積極的に開拓していく面白さを大事にしてほしいと思っています。実際には、作業着を着て行うような力仕事と、白衣を着て行う化学系の実験、さらには顕微鏡をのぞくミクロ観察など、実験の振れ幅は結構大きめです。出口(利用)に近い研究ですので、実社会で感じる問題意識を自ら解決しようという意欲を生かせます。また、「バインダーレス接着」の分野は、現在国内よりも海外の方が研究が盛んです。世界の動向を見つめる広い視野を持って研究することも大事です。卒業後は、材料分野の研究職として、また商社やメーカーの総合職、国家公務員、コンサルティング会社などで活躍されています。
共同研究や産学連携への展望
未利用バイオマスを特色ある木質系材料に加工しよう!
農業や林業の過程で発生する副産物や残渣、食品工業で発生する非可食部など、これまで捨てられたり燃やされたりしていた部分に新しい価値を見出したい、というニーズが高まっています。また、これまで木材が担っていた部分を、木材が潤沢に手に入らない地域では現地で手に入る特色ある原料でうまく代替できないだろうか、そういったニーズも多くなってきています。そのような要望に応えるために、これまで木材はもちろんのこと、樹皮、竹、稲わら、籾殻、麦わら、ナツメヤシ、オイルパーム、ケナフ、ジュート、果物の皮、など多くのバイオマスを扱ってきました。それぞれの持つバイオマスの個性を生かして付加価値を与えることができれば最善ですが、時には個性を均して、汎用性を持たせる必要もあります。基本的には成分分析やミクロ観察を通じて、植物の特徴を把握したうえで、適した利用方法を模索していきます。合板、木質ボード類、ウッドプラスチックおよびその周辺が主な守備範囲です。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : バイオマス、木質材料、合板、木質ボード、バイオマスプラスチック、バインダーレス、自己接着
キーワード2 : 木材不足、フードロス、化石燃料枯渇、海洋プラスチック