プロフィール

森田 隆太郎

森田 隆太郎

MORITA Ryutaro

専攻 生産・環境生物学専攻 Department of Agricultural and Environmental Biology
研究室 作物学研究室 Laboratory of Crop Science
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

イネに学ぶ!澱粉生合成の解明とその利用に関する研究

 澱粉は作物の種子や芋などに貯蔵される天然多糖類であり、発芽や重力方向の感知など多岐に渡る役割を担っています。また、我々人類にとっても必要不可欠な栄養源であり、工業利用もされています。澱粉の分子構造、大きさや形は植物の種類や、澱粉が蓄積する器官によって異なります。なぜこのような澱粉の多様性が生まれるのか、澱粉の生合成メカニズムの全容は明らかとなっていません。イネは葉身や胚乳など器官ごとに、アミロース/アミロペクチン比、大きさや形、生理的な役割が異なる澱粉を蓄積します。このイネの多種多様な澱粉を作り分けるメカニズムとその意義を解明することは、自然界に存在する澱粉の多様性を紐解く鍵となります。そこでゲノム編集技術により作出した変異体や日本・世界各地のイネ品種を用いて、電子顕微鏡による観察や生化学的な解析を行い、多様な澱粉が作り出されるメカニズムの全容解明に挑んでいます。澱粉生合成メカニズムの全容を解明できれば、澱粉を用途に合わせて自由自在にデザインすることが可能となります。例えば澱粉が稲わらに高蓄積するバイオ燃料用や食用に有用な澱粉分子構造を持つ品種の開発により、エネルギー・食料自給率の向上を目指します。

教育内容

Molecular to Table -澱粉分子からその利用まで-

 私はイネが多種多様な澱粉を作り出すメカニズムの解明とその利用に関する研究を行なっています。この研究では植物を圃場に植えて生育調査を行うことから始まり、遺伝子発現解析などの分子生物学実験、酵素特性解析などの生化学実験、植物組織から精製した澱粉の電子顕微鏡観察、澱粉のアミロース/アミロペクチン比や糊化特性の解析など、ナノレベルから圃場スケールに至るまで様々な手法を用いて解析しています。現在メインで行なっている研究テーマは「稲わらに蓄積する澱粉の質的・量的な改変」で、バイオ燃料原料や飼料としての稲わらの利用特性の向上を目指し、ゲノム編集技術で作出した変異体や日本・世界のイネ品種を用いた研究を行なっています。一方で、「機能性成分として注目される難消化性澱粉は植物にとっても難消化性なのか?」といったテーマで、人間が利用するために行なった澱粉の改良が作物生産に及ぼす効果についても研究を行なっています。作物生産から澱粉の利用を見据えた研究まで様々な手法を駆使して行えるのが澱粉研究の魅力です。基礎研究と応用研究、両方に取り組みたい方はぜひ作物学研究室で一緒に研究しましょう!

共同研究や産学連携への展望

未利用植物資源の澱粉を利用したCO2資源化研究

 澱粉は食料・工業原料として我々の生活を支える重要な天然多糖類です。澱粉に関する研究は主にイネの種子などの可食部について行われ、研究成果を利用した品種開発も進んできました。しかしながら、澱粉生合成メカニズムの全容解明には至っておらず、基礎研究によりその生合成メカニズムを解明することで新たな特性を持つ澱粉の開発に繋がります。現在私が主なターゲットとしているのは農業残渣である”稲わら”です。これまでの研究により、逆遺伝学的な手法を用いて稲わらの澱粉蓄積量とバイオエタノール生産効率の改良に成功しています*1。また、イネの葉身や葉鞘に蓄積する澱粉の質的な改変にも成功しており*2、作物の可食部以外に蓄積する澱粉の質的・量的な改良が可能となっています。従来利用されてきたイネの種子やジャガイモの芋に蓄積する澱粉についてはもちろんのこと、ぜひ稲わらなどの未利用植物資源からの澱粉の解析、およびその利用に関して連携できればと考えています。
 *1、 Morita、 R.、 et al. (2017). Plant Pro. Sci. *2、 Morita、 R.、 et al. (2022). Plant Cell Physiol.

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  植物、イネ、澱粉、遺伝子組み換え、植物生理、炭素代謝
キーワード2  :  食料問題、エネルギー問題、大気CO2濃度上昇、CO2資源化