プロフィール
| 専攻 |
生産・環境生物学専攻
Department of Agricultural and Environmental Biology
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| 研究室 |
生物測定学研究室
Laboratory of Biometry and Bioinformatics
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| 職名 |
准教授 / Associate Professor |
| researchmap |
リンク
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一般の方へ向けた研究紹介
“遺伝”を測り、“未来”を育てる — 生物測定学の挑戦
私の研究関心は、量的遺伝学およびその植物・動物育種への応用にあり、これらは総称して生物測定学と呼ばれています。私は、動植物の遺伝的改良を通じて、持続可能性を確保しながら農業生産の最適化と食料安全保障の向上を目指しています。そのためには、遺伝的に優れた個体を選抜し、交配によって次世代を育成する必要があります。しかし、ある個体の表現型が優れているからといって、その個体が必ずしも遺伝的に優れているとは限りません。さらに、観察された表現型の違いが遺伝によるものなのか、栽培・飼養管理や環境条件によるものなのか、あるいは遺伝と環境の相互作用によるものなのかを区別することは容易ではありません。
そこで私は、観測された表現型データのばらつきをゲノムデータをはじめとするオミックス情報と統合し、統計モデリングによって各要因の寄与度を明らかにすることに関心を持っています。具体的には、各オミックスが表現型にどの程度影響するのかを明らかにする「説明」と、オミックスデータから遺伝的能力をどの程度予測できるかを探る「予測」の両側面から研究に取り組んでいます。また、表現型データの量と質は遺伝的解析の精度を左右する重要な要素です。個体の表現型を効率的に計測するためには、デジタルフェノタイピングによる画像やセンサーデータの収集・解析が欠かせません。これらのモデリングから得られた知見をもとに、動植物の育種手法を改良し、農畜産業の効率化や持続可能な生産システムの構築を推進することを目指しています。
教育内容
データを通して“学び”、協働を通して“成長する”
近年、ハイスループット技術の発展により、遺伝育種学は大規模データ駆動型の学問領域へと進化しました。その結果、膨大な情報の中からいかに意味のある情報を抽出し、どのように解釈するかという能力が、今や不可欠となっています。生物測定学では、量的形質や複雑形質と呼ばれる、多数の遺伝子が小さな効果を積み重ねて発現する形質を主な対象とします。これまで統計学が中心的な手法として用いられてきましたが、私の講義や実習では、データ科学やAIをどのように遺伝育種学へ応用できるかという観点にも重点を置いています。遺伝育種学 × データ科学——この2つを自在に行き来できる人材は、世界でもまだ稀です。だからこそ、今この分野で学ぶ人には、世界の最前線に立つチャンスがあります。
また、現代の科学研究は、個々が専門性を持ち寄り、チームとして協働することが求められる時代です。国際的な共同研究も欠かせません。私は過去16年半をアメリカで過ごし、そのうち10年半をアメリカの大学教員として研究と教育の両面に携わってきました。学生のみなさんにも、言語や文化の異なる環境の中で、共通の目標に向かって協調する楽しさをぜひ経験してもらいたいと考えています。このような環境の中で学ぶことは、卒業後に世界を舞台に自信を持って活躍できる人材へと成長する大きな一歩になると信じています。私自身、これまでの国際的な経験を通じて、「環境が人を育てる」ということを強く実感してきました。
共同研究や産学連携への展望
植物も、動物も、データでつながる
生物測定学や遺伝育種学の研究から得られる知見は、論文上の成果にとどまらず、現場での検証を経て最終的には社会実装を目指しています。そのため、農畜産業や食品関連企業・団体のみなさまと連携し、現場の課題解決に取り組むことで、安定的かつ効率的な食料生産の実現を目指しています。また、産学連携を通じて、次世代の人材育成を大学と産業界の双方から推進していきたいと考えています。
さらに、私の研究の大きな特徴は、対象とする農業生物が植物と畜産動物の両方にわたる点にあります。国内外の植物および動物の研究者と協力し、両分野の知見を融合させることで学際的なシナジーを創出しています。今後も、植物・動物データに共通する課題やそれぞれに特有の問題に取り組みながら、両分野の研究コミュニティとの協働を一層深化させていきたいと考えています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 量的遺伝学、育種、統計モデリング、データ科学、機械学習、フェノタイピング
キーワード2 : 食糧問題、食糧安全保障、持続可能な農業、気候変動