プロフィール

岡村 仁則

岡村 仁則

OKAMURA Hironori

専攻 応用生命化学専攻 Department of Applied Biological Chemistry
研究室 有機化学研究室 Laboratory of organic chemistry
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

「つくりたいモノを自在につくる」有機合成化学を基盤に、生命現象を理解する

 天然有機化合物を標的とした有機合成化学研究を展開しています。自然界には様々な機能を持った有機化合物(生物活性物質)が存在しています。これらの中には医薬品や農薬など、人類にとって利用価値の高いものだけでなく、生物学的にも重要な意味を持つものもあります。しかしながら、このような化合物を天然資源から安定かつ大量に手に入れることは必ずしも容易ではありません。有機合成化学による試料供給はこの問題に対する解決法の一つであり、分子レベルでの「モノづくり」を通じて天然物よりも強力な機能を持った化合物へと誘導することも可能となります。私は微生物由来の生物活性物質に着目した合成研究を主として行っている他、これらの生物活性物質がどのようにして生体内で作られているのか(生合成)を有機合成化学的なアプローチから理解しようとする研究も進めています。標的分子を合理的に作り上げる合成経路を立案し、自由自在に合成する「モノづくり」の力を軸足として、最新の計算化学的手法を取り入れながら生命現象を理解することを目指して日々実験を進めています。現在、多剤耐性菌に対する抗菌活性を示す希少天然物について、その生合成機構の理解を目的とした合成研究を進めており、興味深い成果が出つつあります。

教育内容

「分子」という視点から生命科学を捉え、自在に分子設計・合成できる研究者の育成

 分子の成り立ちや分子構造をベースに生命現象を考えることは、農芸化学の分野において極めて重要なことであると考えています。「分子」という視点から生命科学を捉え理解することで、そこから食糧問題や環境問題といった世界規模の課題解決へと幅広く応用することができると信じています。実際の教育活動においては、有機化学の基礎的な知識や化合物の取り扱う技術を、学生実験等でトレーニングしていきたいと考えています。大学院教育においては最先端の有機合成化学の研究を通して、分子構造からその性質を読み解く力、有機分子を自由自在に作る合成力、国際意識とコミュニケーション能力を養うことを意識しています。そのためには、共に問題を解決していく実体験の機会を学生の皆さんとできるだけ多く共有できることが重要であると考えています。研究室でのセミナーや研究報告会、日々の研究実験において密度の濃い指導が行えるよう尽力しています。農芸化学における有機合成化学の伝統を重んじつつ、計算化学をはじめとする最新の技術や考え方を取り入れながら自在に分子を設計、合成できる研究者の育成を目指しています。

共同研究や産学連携への展望

自在な分子合成を基盤とした「役に立つ」、「使っていただける」化合物の創出

 有機合成化学を基盤とする「モノづくり」を通じ、食糧問題や環境問題を始めとする農学分野を取り巻く諸問題の解決に向けて研究を行いたいと考えています。実際には、標的分子の設計に始まり、効率的な合成経路の立案と合成、合成品の構造活性相関研究を通じたより高活性・高付加価値な誘導体創製といったアプローチで、「役に立つ」化合物の創出を行っています。一例として、これまでに農薬への応用が期待できる除草活性分子や、特定の農作物に対する病原菌が生産する推定有毒成分、マラリア原虫に対する殺虫活性を有する化合物の合成を達成しております。そのほか、抗腫瘍活性や抗炎症活性を有する天然物の合成研究も着手しており、今後構造活性相関研究への展開を期待しています。このように特定分子の化学合成に特化して研究を進めている点が我々合成化学者の強みである一方で、創り出した分子に価値を見出し共同研究として「使っていただく」ことで更なる応用研究へと研究を拡大していければと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  天然物化学、有機合成化学、生合成
キーワード2  :  食糧問題、多剤耐性菌に対する抗菌剤開発