プロフィール
専攻 |
水圏生物科学専攻
Department of Aquatic Bioscience
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研究室 |
水族生理学研究室
Laboratory of Aquatic Animal Physiology
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職名 |
教授 / Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
オスとメスはなぜ違う?
動物の行動や生理機能には、様々な雌雄の違いがみられます。例えば、どの動物種でも多くのオスはメスを配偶相手に選び、逆に多くのメスはオスを配偶相手に選びます。そして通常、求愛はオスが行い、メスから求愛することは稀です。また、メスよりもオスの方が一般に高い攻撃性を示し、オスは縄張りやメスを巡って頻繁にケンカします。脊椎動物では、このような雌雄の違いは、精巣や卵巣から放出される性ステロイドホルモン(男性ホルモンや女性ホルモンなど)が脳に作用することで生み出されると考えられています。しかし、性ステロイドホルモンが脳内でどのような機構を作動させることで、それぞれの行動や生理機能に雌雄の違いが生み出されているのかは明らかとなっていません。脊椎動物の中でも、魚類は特に脳が性ステロイドホルモンの作用を受けやすく、男性ホルモンや女性ホルモンの合成阻害剤などを投与するだけで、行動や生理機能が簡単に雌雄で逆転してしまいます。そこで私たちの研究グループでは、魚類のメダカを使って、性ステロイドホルモン依存的に行動や生理機能に雌雄の違いを生み出す脳内メカニズムの解析を進めています。
教育内容
行動や性指向を決める脳内メカニズムに興味がある人募集中
幼い頃から魚が好きで、この世界に入りました。魚には性転換する能力があり、配偶行動や攻撃行動のパターン、そして性指向(どちらの性別を配偶相手に選ぶか)までもが、いとも簡単に雌雄で逆転してしまいます。この現象の不思議さに魅了され、その仕組みを解き明かしたいと感じたのが、今の研究の原点です。研究を進めるうちに、魚に限らず、そもそも私たち人間も含めた動物の雌雄の行動パターンや性指向がどのような仕組みで決まるのかに興味をもつようになりました。私たちの研究室では、同じような興味をもつ学部生や大学院生を募集しています。研究や研究室に関する質問、研究室の見学は随時受け付けていますので、気軽に問い合わせてください。学生の教育では、論理的な思考力をしっかりと身に付けさせることを重視しています。ゼミや実験結果の報告の場などを利用して日常的に議論を「ふっかける」ことで、論理立って思考を深く重ねるための訓練を行っています。そうして論理的に深く考え抜いた末に立てた仮説が、自身の実験によって実証されたときの感覚は、他では味わえない特別なものです。全身が痺れるような中毒性のあるこの感覚をぜひ味わってもらいたいと思います。
共同研究や産学連携への展望
雌雄の違いとその揺らぎやすさを科学する
私たちの研究で得られる成果は、魚類だけでなく、人間を含めた動物の雌雄の違いや、その確かさ・揺らぎやすさを理解することにもつながると期待されます。近年、ジェンダーや性別に対する社会的な関心が高まっており、それらに関する誤解や偏見をなくすための取り組みが世界中で進められています。そのような取り組みが実を結ぶには、雌雄の違いに対する正しい理解が社会で広く共有されることが必要不可欠です。そのためにも雌雄の違いを科学的に示し、社会に発信していく必要があると考え、私たちは研究を進めています。私たちはまた、畜産・水産増養殖の振興への貢献も目指しています。例えば、私たちがメカニズムを解析している配偶行動や攻撃行動、性成熟といった形質はどれも、魚類の養殖効率に大きく影響します。実際に養殖の現場では、性成熟しない、成熟しても産卵に至らない、同種の他個体に対して強い攻撃性を示すといったことがしばしば問題となります。副次的な悪影響を生じさせずにこれらの問題を解決するためには、各形質を直接制御する脳内メカニズムを明らかにし、そこをピンポイントで人為的にコントロールする方策が最適だと考えられます。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 動物、魚類、生命科学、生理、行動、生殖、性、脳、ホルモン
キーワード2 : ジェンダー、水産増養殖、食糧問題