プロフィール

尾張 敏章

尾張 敏章

OWARI Toshiaki

専攻 附属演習林 The University of Tokyo Forests
研究室 森林流域管理学研究室 Laboratory of Forest and Water Resources Management
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

多面的な生態系サービスを創出する多様で複雑な森林づくり

 多様な樹種・サイズの樹木で構成され、複雑な林分構造を持つ混交異齢林の管理は、気候変動への適応策として近年世界的に注目が高まっています。例えば欧州では、「近自然型森林管理」として、EU森林戦略2030によりその普及推進が図られています。私は北海道演習林において、林分施業法に基づく針広混交異齢林管理の研究を一貫して続けてきました。近年は、GISやGNSS、LiDAR、UAV等の空間情報技術を積極的に導入し、森林情報管理の省力化・高精度化を進めるとともに、森林資源管理への応用に関する研究課題に取り組んでいます。また、不確実性下における森林管理の意思決定を支援し、知識(ナレッジ)を基盤とした新たな森林資源管理のあり方を具体的、実証的に提示するため、熟練森林技術者の経験知を表出化し分析する研究も行っています。現行の森林・林業基本計画は、「複層林化と天然生林の保全管理の推進」を主な施策の一つに位置づけ、育成複層林の面積を680万haにまで増やしていく目標を掲げています。私はこれからも、演習林をはじめ国内外の様々な森林フィールドにおいて、多面的な生態系サービスを創出する多様で複雑な森林づくりの実現・普及に向けた研究活動を積極的に展開していきます。

教育内容

森林フィールドを生きた教材として活用した実践的、総合的な教育

 附属演習林の教員として、森林環境科学汎論や森林生態圏管理学、森林科学総合実習等の学部専門科目と、森林流域管理学や持続的森林圏経営論等の大学院専門科目を担当しています。また、国際農業開発学コース(IPADS)の兼担教員として、大学院生の研究指導を行っています。森林環境の保全や持続可能な森林管理を教育していく上では、その理論や方法を長期的に実践してきた森林フィールドこそがきわめて優れた教材です。私は北海道演習林と千葉演習林の林長(補佐)として、実際の森林管理実務に長年携わってきました。北海道演習林では、「林分施業法」の実践を教材として、再生可能な自然資源の利用と生態的機能の保全とを調和させる森林管理の方法論を指導しています。今後も、演習林ほか国内外の多様な森林フィールドを生きた教材として活用しながら、より実践的、総合的な教育を展開していきます。他の教員にはないユニークな経験と知見を自らの強みとし、森林管理の現場に精通した立場を最大限に活かした教育活動を展開していきます。

共同研究や産学連携への展望

多様で複雑な森林づくりの実現・普及に向けて

 これまで、林分構造が空間的に多様で不均一な森林の持続的管理に関して、大学院生や演習林の教職員、学内外の研究者と協力して、数多くの研究を手掛けてきました。その過程で、中欧や東欧を中心に海外の関連分野研究者と交流する機会も多くあり、また国際森林研究機関連合(IUFRO)異齢林施業研究グループの副コーディネータとして、国際的な研究ネットワークとも深い繋がりを持っています。今後も、多面的な生態系サービスを創出する多様で複雑な森林づくりの実現・普及に向けて、「近自然型の森林施業・管理」や「デジタル技術を活用したデータ駆動型森林管理」、「北方針広混交林の林冠構造分析と炭素貯留量推定」、「日本における天然林資源の広域現況把握と生態系サービス評価」など、様々な研究活動を精力的に展開してまいります。学生(特に留学生)にとって魅力のある研究室づくりに努め、多くの学生と協働して戦略的に研究を進めるとともに、学内外の様々な分野の研究者や、企業・法人の皆様とも連携・協力していきたいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  森林管理、林業、天然林、針広混交林、木材生産、リモートセンシング、空間情報技術
キーワード2  :  持続可能性、再生可能資源、森林資源管理、気候変動、生物多様性保全、生態系サービス