プロフィール
専攻 |
生物材料科学専攻
Department of Biomaterial Sciences
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研究室 |
木材物理学研究室
Laboratory of Wood Physics
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職名 |
教授 / Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
木材の組織構造から未来材料を考える
木材は細胞の集合体ですが、その細胞ひとつひとつが、約2/1000ミリの厚さの細胞壁でできており、細胞壁は規則正しく並んだセルロースからなる幾重もの層で構成されています。このような精緻な構造を人工的に再現することは、現代の科学をもってしても不可能です。木材の構造のすぐれた特徴をそのまま借りて、長所を生かして欠点を補えば、高機能な未来材料ができます。われわれのグループは現在、木材に無機物を含浸してキレートを形成させることで、楽器材としての音響性能を伸ばす研究に取り組んでいます。
木材は人類と最も長く関わってきた材料のひとつですが、それは、バイオリンの音色や、野球バッドの耐衝撃性など、それぞれ樹種に固有で特徴的な性質をもつからかもしれません。そうした特徴には、細胞の形や配列が関わっていると考えられます。音波や電磁波などの手段でこれらを読み解き、新しい材料デザインへ展開する可能性を探ろうとしています。
教育内容
木材がわかるとバイオマスがわかる
木材は、数億年の進化の歴史の中で淘汰されてきた材料です。木材には人材料設計のエッセンスが、人工ではなし得ないマイクロサイズで体現されています。講義では、木材の巨視的構造から分子レベルの微視的構造までを学びます。さまざまなスケールでの階層構造と、それによりもたらされるふるまいは、いかなる人工材料より複雑といえるかもしれません。木材を理解すると、数多くのバイオマスや、人工材料をも理解することができます。
木材は人類史において、材料として不動の地位を占めてきました。古来より木材を利用してきたわが国では、人工林が国土面積のおよそ40%を占めています。手つかずの森にひとたび人の手が入ったなら、健全(災害に強く、炭素吸収量が多い)に保つために常に責任をもって手入れし続けることが必要となります。伐って使い、跡地に新しく苗木を植えて循環させるには、社会や経済のしくみまでも必要となります。木材を考えることが、数多くのバイオマスや資源について、文系理系の垣根を越えた理解へと導いてくれます。
共同研究や産学連携への展望
機能材料の生産から廃棄まで、木材を素材(ソリッド)として活かす
植物材料に関する次のようなテーマに取り組んできました。
- 古材の燃焼・強度特性の解析
- 木材の細胞をマイクロリアクタとして作用させて創る、新規な炭素材料
- 東南アジアの種々の未利用植物・農業残渣を原料とした炭化による吸着素材の製造
- 天然高分子(キチン・キトサン)の凝集特性を利用した自己スクロール膜の創製
- もみ殻の燃焼過程で排出されるシリカ灰の結晶化制御
これまでの成果を活かし、木材を素材(ソリッド)により近い形で機能材料化して、生産から廃棄まで環境負荷を小さく抑えた利用を目指します。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
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