プロフィール

一般の方へ向けた研究紹介

樹木病害を究明し、森林・樹木の健全な育成技術を探究する

森林(樹木集団)や樹木(個体)を“健全に”育成することを目標に研究を行っています。森林・樹木の健全な育成を阻む要因には様々なものがありますが、その中でも主に、微生物によって引き起こされる「病害」について包括的に研究しています。病気がどのような原因で発生するのか(病因)、どのようなメカニズムで病気になるのか(発病機構)、どのような環境で多発するのか(発生環境)、その原因はどれくらい強くて脅威となるのか(病原力)、樹木はどのように対抗するのか(抵抗性)など、あらゆる側面の解明を目指しています。これらは、「“健全性”とは何か?」という問いへの探究でもあります。現象の究明と同時に、森林・樹木の健全な育成に資する技術の開発にも取り組んでいます。これまで、天然林・人工林・苗畑・樹林地・緑化樹を対象に、森林・樹木の健全性に関する課題について、診断・防除からメカニズムの解明に至るまで幅広く研究してきました。この先も、常に「現場」に立ち戻りながら、フィールドワークとラボワークを駆使して、課題の解決に挑み続けたいと考えています。

教育内容

自然に対する感性を磨く

森林や樹木のしくみや成り立ちについて、「正確な知識」を伝えることを大切にしています。一方で、単に知識を蓄積するだけでなく、自ら気付き、考え、現前する課題の解決に資する人材を育成したいと考えています。自然を相手にする際には、自然界で起こる現象や変化を的確に感じ取ることが極めて重要であると考えています。このため、フィールドを感じ取る「感性の涵養」を重視し、フィールドにおける体験教育に積極的に関わっています。さらには、教育の本義は「品性の陶冶」にあると考え、この点を心がけています。これまで、数多くの実習科目を担当するほか、専門教育にとどまらず、教養学部前期課程の「全学体験ゼミナール」、高校生を対象としたフィールド体験プログラムや校外実地研修などを多数実施しています。また、小中学生を対象に、民間企業によるサイエンス体験キャンプ、市町村が実施する森林学習およびそのサポーターの養成などにも取り組んできました。今後とも、森林や自然を知り、感じ取り、考えるきっかけを作る手助けを続けていきたいと考えています。

共同研究や産学連携への展望

森林・樹木の健全な育成をサポートする

近年、森林に対する社会の要請は多様化しています。これに伴って、特に人工林において,育成管理(森林施業)の体系や植栽される樹種も多様化しつつあります。このような新たな植栽樹種や育成管理体系のもとでは、病害を始めとする森林被害が、未知のものも含めて新たに問題となるリスクがあります。新たな森林管理の取り組みの中で発生する森林被害について、その原因の究明や対処法の確立に、専門性を活かして貢献したいと考えています。例えば、近年、早生樹であるユーカリ類を短伐期で収穫して木質バイオマス燃料として利用することを目指して、国内各地に人工林を造成する取り組みが行われています。日本でユーカリ類人工林の成長や収量に影響を及ぼす森林被害に関する知見が乏しい中、ユーカリ各種の凍霜害への感受性を評価するとともに、現在、ユーカリ類人工林で発生する病害やそのリスクを明らかにしつつあります。森林・樹木の育成が社会的関心事である中、それを阻む森林被害や健全性の面から、それらの取り組みを応援したいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  森林、樹木、林業、微生物、菌類、線虫、樹病、病理、保護、樹木医学、診断、治療、防除、健全性、育種、育苗、育林
キーワード2  :  森林保護、森林管理、バイオマス、森林被害、森林衰退