プロフィール

柴崎 茂光

柴崎 茂光

SHIBASAKI Shigemitsu

専攻 森林科学専攻 Department of Forest Science
研究室 林政学研究室 Laboratory of forest policy
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

森林文化や環境を保全しながら山村・離島地域の持続的な発展の道筋を探る研究

研究の背景

 約30年前の話になりますが、林政学研究室に進学し、様々な山村調査に参加しました。こうした調査で痛感した事が、「山村で暮らす大半の世帯が、林業で生計を立てていない」という事実でした。
 こうした現状を踏まえ、「狭い意味での林業に限定せず、山から得られる様々な恵みから持続的に収益をあげることができるならば、そうした生業を広い意味での林業として位置付け、その振興を考えるべきではないか?」と思い始め、現在の研究につながっています。
 当初は、計量経済学や環境経済学などの分析を使っていましたが、次第にフィールドワークを通じた地域の歴史性に配慮した研究姿勢に変わっていています。たとえば、森林からの恵みを貨幣的に評価することにも取り組んできましたが、貨幣評価になじまないもの(歴史・文化)にこそ、地域発展のカギになるヒントがあると考え、民俗研究映像の発表や、林業遺産など歴史的資産の保全に関する研究を進めています。

研究の内容

 山村・離島地域における持続可能な発展と森林環境保全の両立可能性に関する研究が大テーマとなります。具体的には、
(1)森林を活用した産業が地域経済に及ぼす影響
(2)持続可能な地域資源管理のあり方
そして(2)から派生したテーマとして(3)保護地域管理があります。
 フィールドワーク調査、アンケート調査、統計資料などから得られた知見を蓄積しながら、林野・環境行政の持続可能な在り方を提案する研究スタンスを採用しています。

今後の展望

 森林の文化・歴史的な価値をより高めることが、結果的に(広義の)林業の発展や、地域づくりにも活かされることを意識しながら、国内外での調査を進めていきます。

教育内容

森林文化や環境を保全しながら山村・離島地域の持続的な発展の道筋を探る研究

<現場(山村、林地)に入りながら、自分自身で考える姿勢を身につけたい>

教育活動

「森林政策学」、「森林環境経済学」「森林資源経済学」などの科目を担当しています。

人材育成の目標

研究活動には、単一の回答(最適解)はありません。自分自身の問題意識を醸成させ、その問題意識に基づいて調査を行い、自分自身の解(学術上オリジナリティのある解)を導き出すことが求められます。現場ごとに、経済・社会の状況は異なります。どのようにオリジナリティを獲得していくのかということを、学生と一緒に考えながら研究を進めていくことになります。

人材輩出の実績

これまで、東京大学、岩手大学、国立歴史民俗博物館での勤務を経て、2021年から再び東京大学の教員となりました。指導してきた卒業・修了生(他機関を含む)は、教員や研究者、官庁職員(林野庁、環境省、総務省)、都道府県庁職員、市役所職員、製紙会社、林業事業体といった林業・林学に関連した分野に加えて、弁護士、公認会計士、医師、金融機関、など多岐にわたります。


<グローバルな視点が求められる時代だからこそ、現場から考えることを大事にしたい>

 林政学研究室は、1893年に「林学第三講座」として誕生して以来、時代の要請に即して、さまざまな研究を蓄積してきました。
 今世紀に入ると、グローバルな視点や考え方(生物多様性、世界遺産、地球温暖化、SDGs)が、以前よりも注目されるようになってきています。しかしそうした時代だからこそ、私はミクロな現場から見えてくるものや、かつて利用されたいた生活の在り方を大事にしたいと思っています。
 これまでのフィールド調査を通じて、グローバルな視点・考え方と、地域住民の考えは、必ずしも合致しないことを痛感してきました。過疎高齢化が進む山村や離島では、人々の声がより反映されにくくなっています。しかし、真に持続可能な暮らし・社会のあり方を考えるのであれば、自然資源とより深いかかわりをもった山村・離島の生活様式は参考になるのではないでしょうか。
 このほかに、古文書(近代・現代の文書資料を含む)にも多くのヒントが隠されています。
 山村や林業遺構の眠る奥地の山を歩きながら、また先人が著した書物を探しながら、研究を進めていきましょう。

共同研究や産学連携への展望

人の心に木を植え・育てる研究

取り組んでいる社会問題

山村・離島の過疎高齢化、文化の保全

現時点での課題に対する成果物や進捗

 柴崎茂光・八巻一成(2022)林業遺産‐保全と活用にむけて.東京大学出版会
 柴崎茂光 監督(2015)屋久島の森に眠る人々の記憶.国立歴史民俗博物館研究映像(80分)

今後の進展に適用可能な技術や研究、展望

短期的にお金にならないもの(文化・歴史)にこそ、長期的な発展のヒントを多く持っていると考えています。息の長い連携ができると良いと思います。具体的には、山村調査への協力、地域や研究室に所蔵されている資料保全・活用への協力、山村・離島に関する映像制作への協力などが考えられます。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  森林政策(林政)、山村振興、保護地域と地域社会、森林文化、林業遺産、森林サービス産業、森林資源勘定、環境政策、公共経済学、民俗学
キーワード2  :  保護地域管理、田園回帰と過疎高齢化、林地転用(メガソーラー)、エネルギー問題