プロフィール
一般の方へ向けた研究紹介
気候変動に伴う水産資源変動の謎に挑戦する
世界各地の海洋生態系において、イワシ・アジ・サバ類のように海の表層で群れを成す小型浮魚類は、気候変動に対応して数十年規模の劇的かつ周期的な資源変動を繰り返してきました。最も象徴的な例は、カタクチイワシとマイワシの間で優占魚種が入れ替わる「魚種交替」現象です。この魚種交替は、黒潮海流域 (日本沖) のみならず、太平洋を越えてカリフォルニア海流域 (カリフォルニア沖)、フンボルト海流域(ペルー沖)等でも見られます。魚種交替のような大時空間スケールでの水産資源変動が気候変動に起因することは明白です。しかし、気候変動に伴う環境変動に魚類がどのように反応することで魚種交替に至るかという生物学的メカニズムはわかっていません。このような水産資源変動に纏わる謎に挑戦しています。具体的には、魚類の生活史における生物特性 (産卵、成長、生残、成熟等) や生態特性 (繁殖生態、初期生態、栄養生態等) を魚種間・海洋生態系間で比較することによって、気候変動から資源変動に至る過程を生物学的に説明するメカニズムを明らかにし、その成果を資源変動の将来予測と資源管理につなげます。
現在の主要研究テーマ
(1) 気候変動に伴う水産資源変動の生物学的メカニズム
(2) 魚類の初期生活史における成長・生残メカニズム
(3) 魚類の生活史における密度効果と水産資源管理
教育内容
水産資源研究を通じて問題解決力の素地を養う
多様な水産資源の持続的利用と水圏生態系の保全は、地球規模での気候変動や環境問題に伴って、今後もその重要性を増すと考えられます。気候変動下での水産資源の持続的利用と水圏生態系の保全を達成する資源管理方策を提言するため、水産資源変動メカニズムの解明を最大の課題として研究を展開しています。研究方針・理念は、以下の通りです。(1)「独創性・新奇性」自身の研究成果に基づいた仮説検証型の研究によって、既存の仮説やパラダイムに対して挑戦的な成果を発信すること。(2)「国際性」これまでの研究活動で構築してきた国際共同ネットワークを基盤として、日本が主導する国際共同研究で、水産資源学分野の最前線を開拓すること。(3)「学際性」異なる専門分野 (海洋、生理、数理、経済・政策、生態系保全等) の視点を取り込むこと。以上を踏まえて目指すのは、研究・教育の相乗効果、即ち、学生と共に行う研究活動そのものが教育となり、その先に新たな成果が生まれるという研究・教育の相乗効果のサイクルを作ることです。水圏生物科学専攻は、研究分野のみならず、卒業生・修了生の活躍の場も多様性に富んでいます。もちろん、研究以外の分野に就職し、水産とは無関係の分野に進む学生も多くいます。しかし、研究活動の様々なプロセスを考えた時、一連の研究サイクルで課題に取り組むことは、全く異なる分野でも問題解決に取り組める素地を養うことになると信じています。水産資源変動に纏わる課題はその材料として最適だと考えます。
共同研究や産学連携への展望
水産資源の持続的利用に向けて
気候変動に伴って海洋環境が変遷する中、いかに水産資源を持続的に利用するか。これは食糧問題にかかる世界共通の課題です。魚類資源の個体数変動 (資源変動) の仕組みを漁業や海洋環境との関係を含めて理解し、これに基づいて適切な資源管理を行うことを目指す水産資源学・水産海洋学には一世紀に及ぶ歴史があります。その歴史の中では、様々なパラダイムが根幹となって研究が発展すると共に、様々な論争も生まれました。水産資源の減少は漁業 (人為的要因) によるものか気候変動 (自然要因) によるものか? 水産資源の持つ自己調整節 (密度依存的過程) と環境の影響 (非密度依存的過程) のどちらが効いているのか? 水産資源変動の将来予測はできるのか? 謎と議論はつきません。水産資源の持続的利用という社会・産業の課題に対して、その生物学的根拠を提供する研究を推進しています。即ち、科学的根拠に基づく知見を産業界に還元し、産学連携による水産資源の持続可能な社会と新たな産業価値の共創に貢献します。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 水産資源学、水産海洋学、海洋生態学、初期生態学、水産資源変動、水産資源管理、魚類、初期生活史、産卵、再生産、仔魚、稚魚、成長、生残、密度効果、環境要因
キーワード2 : 水産資源変動、気候変動、海洋環境変動、持続的利用、生態系保全