獣医動物行動学研究室では「ソロモンの指環を手に入れよう!」という標語のもと、動物の“心”を理解することを目指しています。基礎研究や応用研究を積み重ね、動物行動のしくみと意味をより深く把握することが、動物の心を理解することに繋がると考えています。将来的には私たちが行なっている研究が、人間と動物がより良い関係を築くことに貢献することを願っています。現在、私が行なっている研究テーマは、以下のふたつです。 ① 反芻動物におけるケミカルコミュニケーションに関する研究
反芻動物であるヤギや牛では、雄から放出されるフェロモンが雌の嗅覚を介して性腺機能を活性化する「雄効果」という現象が知られています。これまでに、ヤギの雄から放出されるフェロモンの主要成分が4-ethyloctanalであることを突き止めました。現在は、ヤギで使用した研究手法を援用しながら牛のフェロモン同定を目指しています。 ② 犬の気質に関する行動遺伝学的研究
人間を含む多くの哺乳類では明瞭な個性が認められます。行動特性の個体差を論ずる場合に、その生得的基盤は一般に気質と定義されます。気質についてはまだ不明な点が多いのですが、その遺伝学的背景が明らかになれば行動の進化や発達に関する基礎研究にとって重要な知見となるだけでなく、人間の精神疾患やペットの問題行動に対する診断治療への応用、あるいは動物の個性に合わせた取り扱いや特殊な使役目的への適性の早期判定といった実践的局面においても研究成果の活用が期待されます。本研究テーマでは、犬をとりあげて攻撃性や不安といった様々な気質と遺伝的多型(DNA配列の個体差)との関連を調べています。