プロフィール
専攻 |
生圏システム学専攻
Department of Ecosystem Studies
|
研究室 |
生物多様性科学研究室
Laboratory of Biodiversity Science
|
職名 |
准教授 / Associate Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
生物多様性を理解するための生態学と進化生物学の統合研究
私たちは自然からの恵みを受けて暮らしています。自然の恵みを生み出しているのが生物多様性です。現代の人間活動は生物多様性の存続を脅かし、人間自身の持続可能性の危機をもたらしています。人間活動の影響の下で、壊れつつある生物多様性を維持し、回復させ、自然の恵みを利用しつづけていくにはどうすればよいのでしょうか?生物多様性を作り出しているのが『進化』と『生態』の2つのプロセスです。『人間活動』は生物の進化可能性や生物どうしの関係性を変えたりすることで、生物多様性が持続的に維持されるしくみを改変しているのです。そのメカニズムを理解するために、『数理モデル』と『コンピュータシミュレーション』を用いて『生態学と進化生物学の統合研究』を行っています。生物多様性を生む種分化のしくみに対する人間活動の影響や、気候変動に対する生物種間相互作用の応答、生物多様性の劣化に対する生態系機能や生態系サービスの変化を解き明かす理論を構築しています。将来の生物多様性や進化プロセスの保全に役立つ理論を生み出していくことをめざしています。
教育内容
数理で解き明かす生物の進化・生態・人間活動影響
駒場生向けの講義(『環境と生物資源』)では、生物の個体数の増減や絶滅確率、生物どうしの複雑な関係性や、生物多様性と生態系機能の関係を、数理モデルで表現し予測するための基本を紹介しています。
農学部に進学する2年生向けの講義(『生物の多様性と進化』)では、進化と生態の相互作用によって生物の種分化や適応放散が起きるしくみを様々な例を交えながら紹介しています。また、現代の人間活動によって起きる進化や、人間活動が駆動する進化を予防したり管理したりするためのアプローチを考えています。
農学部3年生向けの講義(『生物多様性科学』)では、生物多様性科学の根幹となっている進化生物学や生態学の基礎理論を学習します。基礎理論の根拠となっている数理モデルを平易に解説し、その理解を深めます。
卒業研究や大学院での研究は、学生の興味を主体としたテーマを設定して行います。自身のアイデアにもとづいて、数理モデルやコンピュータシミュレーションを自ら構築し、解析します。複雑な生物の世界を作り出しているしくみを発見して数理的に解き明かす面白さや、生物の進化や生態に対する人間活動の影響を客観的に解明し予測するための数理的アプローチの重要性を感じてもらえればと思っています。
共同研究や産学連携への展望
生物多様性の数理モデリング
現在、特に力を入れて取り組んでいるテーマの一つが、生物多様性と感染症リスクの関係を解明する研究です。これまでのところ、一般的なベクター媒介性感染症を対象としてベクター生物の多様性が感染症リスクを左右する定性的なメカニズムを大まかに把握することができました。この成果を具体的な感染症に適用していこうとしています。また、ベクター生物と宿主生物の多様性が感染症リスクに対してどのような相乗効果を与えるのかに興味を持っています。このようなテーマでの実証研究を志向する方と連携できればと思います。
また、草地生態系における生物多様性と生態系機能の関係を記述するための一般理論の構築を進めています。そのような理論構築に興味があり、理論整備のためのケーススタディをお持ちの方と共同できればと考えています。
他にも、個体群動態や群集動態、進化動態の数理モデリング全般の研究実績があります。数理モデルに表現して検証したいアイデアなどがあればそのお手伝いができると思います。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 生態、進化、生物多様性、数理モデル、シミュレーション、種分化、適応、生態系機能、群集、個体群
キーワード2 : 気候変動、生物多様性、外来生物、感染症、生態系サービス、TNFD