プロフィール
一般の方へ向けた研究紹介
精密な生体機能評価に基づく病態生理学・毒性学研究の推進
私たちの生活に欠かせない食品や医薬品の安全を支えるため、病態生理学・毒性学の視点から次世代の非臨床試験のあり方を探究しています。人への臨床試験を行う前に、動物たちの力を借りて安全性を確認するプロセスは、全身の臓器が複雑に連携して動く生命の仕組みを理解する上で、現在の科学において欠かすことのできないステップです。私たちは、動物の心拍や呼吸といったリアルタイムの生体信号(バイタルサイン)を解析する新規技術などを模索し、組織の微細な変化を捉える病理学的解析を融合させることで、これまで見逃されていた体の中の微かな異変を精密に分析しています。解析技術の革新は、病気が進む仕組みの解明や新しい予防・治療法の開発に大きく貢献するだけでなく、動物たちの状態をより深く、かつ非侵襲的に理解することを可能にします。これにより、実験に伴うストレスや苦痛を最小限に抑え、倫理的にもより配慮された評価系の構築を実現させます。こうしたアプローチを感染症やその他の病態モデルを用いた研究にも展開し、健康社会の実現に向けた次世代の非臨床研究を担うイノベーションに挑戦します。
教育内容
生命現象の多面的な理解を通じて、食と医療の「安全」を担う人材を育成する
獣医師や動物科学の専門家にとって最も重要な能力の一つは、動物が見せる変化の裏側に潜む複雑な生体維持機構を理解し、そのメカニズムを論理的に説明できることだと考えています。
例えば、ある薬剤を投与して心拍数が上昇した際、その原因は心筋への直接作用だけとは限りません。血管への作用による反射性の変化、脱水に伴う循環不全、自律神経バランスの変動、あるいは測定機器の原理に依存したアーティファクトの可能性すらあります。こうした複合的な事象を正しく診断するには、個体から得られる情報を、分子細胞生物学や工学などの多分野の知見と統合して読み解く力が不可欠です。
数々の講義や実習、そして卒業研究(テーマ例:・循環機能の高精度・非侵襲解析技術の開発・行動・生理シグナルの統合による多次元的な生体機能解析・微小循環の恒常性維持機構と、その機能破綻に至る分子機序の解明・病原微生物感染に伴う循環動態変化とバイタルサインの連関解析)を通じて、生命現象を多面的・多角的に捉える訓練を重視しています。独自に開発する精密な生体機能評価技術を活用し、動物が見せる微かなシグナルを科学的に分析するプロセスを学びます。
既知の知識だけでは説明できない事象に直面したとき、自ら仮説を立て、異なる分野の専門家と議論しながら解決の糸口を見出す。私たちは、基礎研究と臨床・社会を繋ぐトランスレーショナル・リサーチを実践し、次世代の安全性研究を牽引できる主体的な人材の育成を目指しています。
共同研究や産学連携への展望
高度な生体機能評価技術を活用した、食と薬の安全性・機能性研究の推進
私たちの身近にある食の安全・安心を支え、また革新的な薬をより早く、確実に届けるために、非臨床試験の精度向上は社会全体の重要な課題となっています。特に食品分野では、機能性表示食品等の普及に伴い、エビデンスに基づいた安全性と有効性の確かな評価がこれまで以上に求められています。一方、医薬品開発においては、開発後期のドロップアウトをいかに防ぐかが、開発コストの抑制と新薬創出の鍵を握っています。
当研究室では、小型実験動物を用いた精密な生体機能評価と病理学的解析の融合を通じて、以下のような領域での貢献を目指し、共同研究や技術的な議論を深めていきたいと考えています。
1. 食品・医薬品の安全性評価の高度化: 独自の生体機能解析技術を活用し、食品成分や添加物、医薬品候補物質が循環器系などの全身機能に与える影響を、非侵襲かつリアルタイムに評価する手法を構築します。
2. 多様な病態モデルによる機序解析: 食中毒等の病原微生物感染症や、循環器疾患などの病態モデルを活用し、食品の予防効果や医薬品の治療効果のメカニズムを、個体レベルでの機能変化として可視化することに取り組みたいと考えています。
3. アニマルウェルフェアを重視した評価プロトコルの提案: 遠隔・非接触的なバイタルサイン計測技術等により、動物のストレスや苦痛を最小限に抑えつつ、質の高いデータを継続的に取得する動物に優しい評価系の社会実装を模索しています。
これまでの抗がん剤心毒性解析や毒性克服手法の研究実績を礎に、食と医療の安全を形にするための新たな技術開発や、既存の評価系では捉えきれない微かな生体シグナルの解析にご関心のある皆様と、ぜひ知見を共有できれば幸いです。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 病態生理学、毒性学、非臨床試験、毒性試験、安全性薬理試験、バイタルサイン解析、生体機能評価、循環器、血管、病態モデル動物、バクテリアルトランスロケーション、感染症モデル
キーワード2 : 食品開発、医薬品開発、リスク評価、安全性、生体影響評価