プロフィール
一般の方へ向けた研究紹介
人と野生動物の相互作用を理解して両者の共存の実現に挑戦
現在、急速に拡大する人間活動によって、世界各地で生物多様性の低下が深刻化しています。この流れを食い止めるためには、人間活動に対して生き物がどのように応答しているのかを科学的に明らかにし、その知見を基づいて効果的な保全や管理の方法を探ることが欠かせません。
一方で、野生動物の中には人間活動にうまく対応し、都市のような人工的な環境にあえて進出する種もいます。こうした種の中には、人との軋轢の問題を引き起こすようになっている種も少なくありません。人と野生動物の共存を実現するには、単に動物を守るだけでなく、我々がこうした野生動物とうまく関わっていく方法を見つける必要があります。
私は、都市環境や自然観光地を「人と野生動物のせめぎあいの最前線」と捉え、そこで暮らす野生動物、とくに北海道のエゾリスをモデルに研究を行っています。たとえば、都市公園と郊外の森林に生息するエゾリスの行動や生活パターンを比較し、都市化が生物に与える影響を明らかにしています。また、人なれ(ヒトへの慣れ)がどのように生じるのか、そのメカニズムや、人なれが野生動物や人間社会にもたらす影響についても調べています。さらに共同研究を通じて、生理学や動物認知学の観点から都市化が野生動物に与える影響を探り、その成果をもとに都市計画への提言につなげることも目指しています。
人と野生動物とのダイナミックな関わりを解き明かし、その知見を両者の共存に役立てることが、私の研究の大きな目標です。
教育内容
フィールド保全生態学:現場に根差した生態学と生物多様性保全の次世代育成
私たちの研究室では、保全生態学に関する講義や実習を通じて、生物多様性保全への理解と視点を育む場を提供しています。生態学を中心に学びながらも、他分野の最先端の研究や実践的な取り組みを学ぶことで、幅広い知識と視野を身につけてもらいたいと考えています。また、ゼミや研究活動を通じて、海外の第一線で活躍する研究者と交流する機会もあり、国際的な視点から研究に取り組める人材の育成にも力を入れています。
そして、当研究室で特に大切にしているのは「フィールド保全生態学」です。フィールドには、ワクワクする生態学的現象や新しい研究アイディアが溢れています。人と野生動物のリアルな関わりも、フィールドに出なければ目にすることはできません。現場で自ら体験して、それをもとに研究を立案してデータを集め、解析し、成果としてまとめ上げていく一連の流れを経験することで、生物多様性保全の課題に対して主体的に考え、その解決に取り組める力を養ってもらいたいと考えています。もちろん、自然を相手にする研究は、思い通りにいかないことも多々あります。しかし、その過程を乗り越えること自体が大きな学びとなります。生き物や生物多様性保全に興味がある人、人と野生動物の関わりに関心がある人は、私たちと一緒にワクワクにあふれたフィールドへ出かけましょう!
共同研究や産学連携への展望
野生動物とのちょうどいい距離をデザインする
私たちの研究室では、研究の成果を都市計画や持続的な自然観光の現場に生かすことを目標にしています。現在、農業被害、人身被害、人獣共通感染症をはじめとした、野生動物の軋轢の問題が、全国各地で深刻化しています。そして、人口減少を背景に、その問題が増加の一途をたどるとされています。今後、私たちが安心した暮らしを続けていくためには、人と野生動物の軋轢を減らしながら、彼らとWin-Winになるような付き合い方を模索する必要があります。研究室では、人間の活動が野生動物に与える影響や、逆に野生動物が人間社会に与える影響を評価・モニタリングすることで、両者にとってちょうどいい距離の維持・創出を研究しています。例えば、都市空間での人と野生動物の相互作用をモニタリングし、それをもとに両者の軋轢を減らしつつ、ポジティブな触れ合いの促進を図る空間デザイン・設計に貢献する材料を提供いたします。また、アウトドア活動の現場において、動物側の人間に対する応答をモニタリングすることで、自然や動物に配慮した自然観光利用の方法について、提案・提言を行います。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 生態学、都市生態学、生物多様性、人と野生動物の関わり、動物
キーワード2 : 生物多様性保全、野生動物管理、都市計画、持続可能な自然観光