プロフィール
専攻 |
附属生態調和農学機構
Institute for Sustainable Agro-ecosystem Services
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研究室 |
生物・物質循環研究領域
Biogeochemical Cycle Research Area
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職名 |
助教 / Research Associate |
一般の方へ向けた研究紹介
イネの多収化を目指して ―新たな科学的知見の獲得からモノづくりまで―
世界人口の急激な増加により食料需要が高まっているなか、近年では世界規模で気候変動が進行しており、食料の安定的な生産・供給がより困難な状態になっています。食料問題のさらなる深刻化が予測される将来において、食料安全保障の確立は世界共通の喫緊の課題であると言えます。
世界三大穀物のうちイネは、世界人口の約半数もの主食であり、総人口における総摂取カロリーの約20%をまかなう作物です。イネの収量性の改良は、長年にわたり取り組まれており、これまでに数々の多収品種が育成されています。しかしながら、ここ数十年でみるとイネの収量性の増加は頭打ちになってきており、さらなる増収を図るうえでの打開策が求められています。
現在、私はイネの品種間での比較から、多収性に関わる新規の有用形質の探索や、新規有用形質に関わる遺伝子の特定を目指して研究を行っています。また、植物体内での生理的な機能が既にわかっている遺伝子については、多収性においてプラスの効果をもつ自然変異アレルの集積や、ゲノム編集技術を利用した新規有用アレルの作出を行っています。これら多収性に関わる新規有用形質あるいは遺伝子を改良したイネの作出は子実収量の増加が期待され、食料問題の解決に貢献すると考えられます。
教育内容
イネの多収化を目指して ―新規有用形質の探索からゲノム編集を活用した育種まで―
世界人口の増加により食料需要は今後さらに高まることが予想されています。また、世界人口の増加はエネルギー消費量および二酸化炭素排出量のさらなる増加を招くことが懸念されています。そのため、食料安全保障の確立と循環型社会の構築は、人間が自然環境と調和しながら生活していくうえで必要不可欠です。
現在、私はイネの光合成能力と植物体内の炭水化物分配・利用を改良することにより、イネの炭素吸収・固定能力の向上および子実収量の増加を目指しています。光合成能力の改良では、機能既知の光合成関連遺伝子をゲノム編集により遺伝子改変することで、高い光合成能力を付与した植物体あるいはアレルの作出を行っています。植物体内の炭水化物分配・利用に関しては、出穂前後の茎部と穎果(籾)間の光合成同化産物の分配や利用に関わる新規有用形質および遺伝子の探索を行っています。
私の所属する生態調和農学機構(東京大学田無キャンパス)では実験施設と圃場施設が併設されており、遺伝子レベルから圃場レベルまでの幅広い研究を行うことができます。このような環境で研究活動を行うことで、学生の皆様には農作物の生産現場との繋がりを常に意識しながら、ミクロとマクロの両視点から農学と向き合っていただけると考えております。
共同研究や産学連携への展望
イネの多収化により、食料問題と環境問題に立ち向かう
世界人口の増加による食料需要の増加、およびエネルギー消費量と二酸化炭素排出量の増加は、人間が自然環境と調和しながら生活していくために改善しなければならない重要な課題です。
現在、私はイネの光合成能力と植物体内の炭水化物分配・利用を改良することにより、イネの炭素吸収・固定能力の向上および子実収量の増加を目指しています。光合成能力の改良では、機能既知の光合成関連遺伝子をゲノム編集により遺伝子改変することで、高い光合成能力を付与した植物体あるいはアレルの作出を行っています。植物体内の炭水化物分配・利用に関しては、出穂前後の茎部と穎果(籾)間の光合成同化産物の分配や利用に関わる新規有用形質および遺伝子の探索を行っています。
将来的には、作出した多収イネを活用して、耕畜連携や再生水の利用など資源循環の中に多収イネ栽培を組み込むことができるような社会システムの実現を目指していきたいと考えております。また、イネの子実の収量性だけではなく、業務用や飼料用、バイオエタノール用など様々な利用用途に合わせた品質の改良も行っていきたいと考えております。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 植物、イネ、多収性、登熟、非構造性炭水化物、光合成、ゲノム編集、QTL解析
キーワード2 : 食料問題、気候変動、地球温暖化、二酸化炭素、炭素循環型社会、資源循環