プロフィール

一般の方へ向けた研究紹介

微生物の生きざまを代謝酵素から探る

私たちは生物の生命活動の基盤である「代謝」の仕組み、特に微生物の代謝酵素の働きと調節に注目して研究しています。代謝とは、栄養をエネルギーに変えたり、必要な物質を作ったりする化学反応のことで、それを支えているのが「酵素」です。酵素はいつでも働いているわけではなく、環境の変化や細胞の状態に応じて、必要なときにだけ働くように、うまく調節されています。私たちは、酵素がどのように周りの環境変化を感じ取って調節を受けているのかについて、その仕組みを分子のかたち(立体構造)や、微生物の中での役割を調べることで明らかにしようとしています。同じ名前の酵素でも、違う生物に由来するもの同士ではその調節の仕方を異なっています。そうした多様な調節のしくみを理解することで、生物の生きざまに迫り、将来的には微生物を使ったものづくりにも役立てたいと考えています。

教育内容

微生物に学び、柔軟な発想で新しい発見へ

微生物の代謝酵素がどのように調節されているかに着目し、生化学、微生物遺伝学、構造生物学などの手法をもちいて、その仕組みを多面的に明らかにする研究を行っています。酵素は生体内での重要な化学反応を担うものですが、代謝の恒常性を維持するために転写や翻訳、翻訳後など様々なレベルで巧妙に制御されています。このような複雑な仕組みを理解するためには、一つの実験手法や専門領域に閉じこもるのではなく、異なる視点や技術を組み合わせて研究を俯瞰する姿勢が重要です。また自分の研究テーマ以外にも感心を持ち、議論することで新たな発見や発想につながると考えています。研究を始めたての学生も、一人の研究者として尊重され、自ら考えて手を動かし、結果と真摯に向き合う姿勢を大切にしています。生命現象の巧妙さを謙虚に見つめ、どんな結果からも学びを得られる柔軟な思考力と、研究を社会に発信する力を育てることを目指しています。

共同研究や産学連携への展望

代謝酵素の調節から効率的な物質生産へ

我々は、微生物がもつ代謝酵素の調節機構、特にアロステリック制御やタンパク質間相互作用を介した活性制御の構造基盤に着目して研究を行っています。代謝酵素は、細胞内の代謝状態や環境条件を感知し、その活性を柔軟に調節することで、生体の代謝フローを最適化しています。私たちは、制御ドメインや制御タンパク質が関与するセンサー機構を中心に、酵素活性調節の分子メカニズムを、生化学・構造生物学・微生物遺伝学などの多角的手法を用いて解析しており、実際に細胞内の酸化還元状態を感知する新しいタンパク質を見出しています。こうした知見は、代謝制御を設計要素として組み込むことで、微生物を用いた有用物質の高効率生産に応用可能ではないかと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  微生物、代謝、酵素、好熱菌、酵素調節、構造生物学、X線結晶構造解析、アロステリック制御、タンパク質間相互作用、疑似酵素
キーワード2  :  バイオものづくり、有用物質生産