化学

各専修における研究・教育内容等
< 専修名の色=課程 応用生命科学課程/環境資源科学課程/獣医学課程 >
生物素材化学専修では、環境に優しい応用化学のことをさす「グリーンケミストリー」に関して深く学ぶことができます。課程専門科目である基礎高分子化学、植物バイオマス化学、森林生物化学、木材化学、有機反応機構などの講義とともに、生物材料化学実験や生物素材化学実験などを通して、化学を用いたバイオマス利用に関する様々な実験手法を学びます。バイオテクノロジー(生物工学)およびマテリアルエンジニアリング(材料工学)とグリーンケミストリーを組み合わせ、実社会でバイオマス利用を拡大させるための人材育成を行います。
水圏生物科学専修では、水圏生物の持続的かつ高度有効利用に資するために、無機化学、有機化学、生物化学および分析化学など広く化学と関係した研究・教育を行っています。化学と関連した研究内容に、環境水中の溶存物質分析、水圏生物に含まれる有用化合物の探索・構造決定・生合成機構の解析、水圏生物のエネルギー代謝、水産食品中のアレルギー原因物質や味覚改善物質の探索などがあります。課程専門科目の水生生物化学と水圏天然物化学で、水圏生物に特有の物質代謝や含有成分について学び、水圏環境科学で環境水中の成分について学びます。水圏生物科学実験では、水圏に関連する無機および有機化合物の分離・分析に必要な技術を習得します。
生命化学・工学専修の前身は「農芸化学科」といい、当時から化学的な視点や手法で農学的に重要な生命現象を解明しようとする研究がなされてきました。現在でもその研究姿勢は引き継がれており、生物機能開発化学、生物有機化学、有機化学、生物制御化学、生物化学、分析化学、栄養化学、食品生化学、食糧化学の6研究室名に「化学」がついています。研究対象とする化学物質は小さな金属イオンから低分子有機化合物、そして巨大なタンパク質と幅広く、様々な生命現象に対して、化学物質が果たす役割を解析したり、あるいは生命現象のメカニズム解明のためのツールとして化学物質を用いたりするといった多様な研究が展開されています。
いろいろな化学物質が、獣医療において薬として利用されます。獣医学専修では各薬剤の薬理作用について学びます。また、私たちの周りにはいろいろな化学物質が存在します。その昔、パラケルススは「すべての物質は毒物である。毒物でないものはない。正しい用量のみが毒物と薬物を分ける。」と述べていますが、獣医学専修では化学物質のヒトや動物、そして環境に及ぼす有害作用についても学びます。くわえて、これらの薬理作用や有害作用は動物実験によって調べることができます。獣医学専修では動物実験の方法と実験動物の福祉についても学びます。
森林環境資源科学専修では、「森林-土壌-流域における化学物質の循環」に関するサイエンスを展開しており、森林生態系における炭素循環、 樹木の養分となる元素の循環、大気汚染物質の森林外からの流入・森林内での移動・森林外への流出のメカニズムなどの観点から森林と水・物質の 循環に関する研究を行なっています。福島原発事故で周辺の森林に沈着したセシウムの移動についても研究しています。課程専門科目では森林水文学、砂防工学、森林保全学、森林圏生態系管理学をはじめ、森林と化学に関連するいくつかの科目を学べます。学生実験では森林保全学実習、森林土壌学実習などで基礎的な実習を行っています。
研究紹介 - 広報誌「弥生」から -
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石油王におれはなる!!
水圏生物科学専攻 岡田 茂 准教授
微細緑藻Botryococcus braunii は、炭化水素という油を大量に作るため、石油の代わりとなるバイオ燃料源としての利用が期待されています。この微細藻が炭化水素を作るメカニズムを研究しています。  75号
炭酸カルシウムで脱炭素!?
応用生命化学専攻 鈴木 道生 准教授
生物が鉱物を作る現象をバイオミネラリゼーションと呼びます。バイオミネラリゼーションの分子メカニズムを利用し、二酸化炭素をカルシウムイオンに効率的に結合させ脱炭素を目指す研究を進めています。  74号
生命を導く匂いの価値を測る
応用生命化学専攻 東原 和成 教授
動物にとって嗅覚は、獲物、天敵、異性など、生きて子孫を残すための情報を感知するために重要な感覚です。ヒトも香りで料理の美味しさや季節感を感じます。私たちは、生態環境で匂いやフェロモンが紡ぎ出す動物間コミュニケーションを理解し、ヒト社会での香りの有効利用を目指した基礎研究をしています。  67号