生物資源

各専修における研究・教育内容等
< 専修名の色=課程 応用生命科学課程/環境資源科学課程/獣医学課程 >
地球温暖化などの環境問題に対し、木材の適切な利用を核とした資源循環型社会への移行が世界的に求められています。木質構造科学専修では、こうした課題に対応しながら安全かつ快適な生活を営むことができるような社会の実現を目指して、木質資源を有効活用してつくられる構造物(木造建築物・木造住宅・木製家具ほか木材を使う製品)の各種性能(耐震等の構造性能、温熱等の居住環境性能ほか)および、木材・木質材料(集成材・合板・パーティクルボード等)の物性や材料開発などについて研究・開発を行っています。
エネルギー・資源問題や環境問題を解決していくには、生物資源(バイオマス)をより高度に利用していくことが重要です。生物素材化学専修では、光合成によって太陽エネルギーが蓄積されたバイオマス資源を有効利用するための基礎および応用研究を推進しています。バイオマスという対象に対して、マテリアルエンジニアリング(材料工学)・グリーンケミストリー(環境に優しい応用化学)・バイオテクノロジー(生物工学)を組み合わせて教育・研究を進めています。それぞれの分野における専門知識に加え、幅広い社会の要求に答えられるタフな若き研究者の育成も目指しています。
森林のもたらす再生可能な木材資源を安定供給するためには、環境と経済の両面で持続可能な森林経営を確立することが不可欠です。森林環境資源科学専修では、大型製材工場やバイオマス発電等の木材需要、木材資源を供給する森林経営体の収益性を分析し、地域レベルから国レベルにかけて公益的な視点に立った林業経営計画の策定や、森林管理手法に関する様々な研究を行っています。森林経理学、森林計測学、森林評価学等の講義科目では、木材資源量の時間的・空間的予測や生産計画、評価方法の理論を学ぶことができます。学生実習では、具体的な森林を対象とした林業経営計画やシミュレーション、経済性の評価などについて演習を行っています。
水圏生物資源は、乱獲せずに持続的に漁獲するための資源管理、種苗放流や環境の改善によって資源を増やす増殖、生物を人間の管理下で飼育する養殖によって利用されています。水圏生物科学専修では、これらの生産活動の発展のため、水圏生態系、水圏生物の生理や生活史、遺伝・育種、感染症など広範な分野の研究を行っています。課程専門科目では、研究の基礎となる、水生脊椎動物学、水生無脊椎動物学、水生植物学、水圏環境科学、水産資源学、漁業学、水産増殖学、魚病学、海洋生態学など水圏生物や水圏生態系に関連した科目を学べます。また、水圏生物の分類と形態、発生、生理、感染症、漁具・漁法など幅広い内容の学生実験を行っています。
農業・資源経済学専修では、生物資源の保全や持続的な利用に関して、社会や経済との関係から、問題の解決について研究を行っています。生物資源には、動物・植物等の生物それ自体だけではなく、生物を形作る遺伝資源や生物が生産する有機資源であるバイオマスなどがあります。これらの価値ある資源を効率的かつ効果的な利用するためには、技術だけではなく、有効に機能する制度や社会システムが必要となります。資源をめぐる利害関係者の調整、システムを維持する組織作り、知的財産権や安定的な経済活動を保証する制度や法律が不可欠となるため、生物資源をめぐる人、組織、産業の経済学的な理解を深めることを重視しています。
生物資源は、食料としての利用はもちろんのこと,工業材料やエネルギーとしても広く利用されています。生物資源の利用に際しては、5Fと称されるFine chemical、Food、Feed、Fertilizer、Fuelの優先順位でのカスケード(段階的)利用やリサイクルを進め、無駄をなくすことで得られた資源を最大限に利用することが重要な課題となっています。生物・環境工学専修では、農学と工学にかかわる両方の知見をあわせ持つことの強みを生かし、これらの各段階に関わる研究課題に取り組んでいます。授業では、バイオマスエネルギー工学や生物プロセス工学で生物資源の利用方法について学ぶとともに、生物・環境工学実験の一環としてバイオマス利用施設の見学が行われています。
私たちの暮らしは、生態系から得られるさまざまな恵み=生態系サービスによって支えられています。しかし、近年の生物多様性・生態系の変化は生態系サービスの著しい劣化を引き起こしており、荒廃した生態系の修復と生物資源の持続的利用が喫緊の課題となっています。緑地環境学専修では、ランドスケープエコロジーや自然共生社会論をはじめとする多彩な科目の履修を通じ、豊かでうるおいのある緑地環境の再生と生態系サービスの持続的利用を実現するための多様なアプローチの習得を目指します。
森林は木材資源の宝庫です。森林生物科学専修では、木材資源の持続的な利用を目的として、主要な造林樹種や天然樹種に関する生態学的、生理学的、遺伝学的研究や、病虫獣害や非生物害に関する研究等を行っています。講義科目の中には、造林学、樹木学、樹木医学、野生動物管理論、森林生態圏管理学等の関連科目があり、学生実習ではさまざまな人工林や天然林を実習の場として学ぶことができます。
生物資源とは、人類が有効利用可能な動物、植物、微生物の全てを指す広範な概念です。当専修では、化学やバイオテクノロジーなどの手法を用いて、種々の生物資源を対象に研究を進めています。今までの知識をさらに深めたり融合させたりして新たなサイエンスに発展させたり、個々の生物資源に対して新たな価値を創造したりして、未来を指向して研究を進めています。課程専門科目では、動物、植物、微生物についてのさまざまな学知を習得できます。さらに、そうした学知を裏打ちするものとして、学生実験により多くの経験知を身につけることが可能ですので、それらを充分に自分のものとした上で、生物資源を対象に卒論研究を始めることができます。
研究紹介 - 広報誌「弥生」から -
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ゲノムと水産と予測
附属水産実験所 菊池 潔 教授
「もはや日本は水産後進国」と言ったのは、2015年の農林水産大臣でした。これが本当かどうかはともかく、今、「養殖先進国」といったとき、そこに日本が入っていないことは確実のようです。私たちは、ゲノム情報と予測科学を活用して、世界を再び牽引できるような研究成果をあげることを目指しています。  78号
さかなをもっとおいしく、ずっとたのしむ
水圏生物科学専攻 渡邊 壮一 准教授
食をたのしむ上でおいしさは重要な要素です。養殖技術によってさかなが持つおいしさをより引き出すことも可能になってきました。豊かな魚食の持続可能性に貢献できるよう研究を進めています。  72号
農学が牽引する新しいバイオプラスチックへの挑戦
生物材料科学専攻 岩田 忠久 教授
プラスチックは石油からつくられるというこれまでの常識を覆し、木材成分や植物油などのバイオマスからつくることに挑戦すると共に、高強度化、高耐熱性化、環境分解性および生体吸収性付与などの実用化に向けた取り組みを展開しています。  62号