発表者
藤本   優 (東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授)
海老根 一生 (基礎生物学研究所 細胞動態研究部門 助教)
西村  浩二 (島根大学 生物資源科学部 准教授)
堤   伸浩 (東京大学大学院農学生命科学研究科 植物分子遺伝学研究室 教授)
上田  貴志 (基礎生物学研究所 細胞動態研究部門 教授)

発表概要

図1 VAMP72がPICALM1によって細胞膜から回収される様子を示した模式図

 全ての生物は細胞からできており、その内側と外側は「細胞膜」で仕切られています。この細胞膜には、細胞内外の物質のやり取りや細胞外環境の感知に関わる様々なタンパク質が存在しており、細胞の恒常性維持や環境変化への応答に必須の役割を果たしています。真核生物では、細胞膜におけるタンパク質の量や配置が「膜交通」という細胞内の小胞や小管を介した物質輸送システムによって厳密に調節されています。その具体的なしくみは、生物のさまざまな体制やライフスタイルに応じて、それぞれの生物の進化の過程で独自の多様化を遂げたと考えられています。
 基礎生物学研究所細胞動態部門の上田貴志教授と海老根一生助教、島根大学生物資源科学部の西村浩二准教授、東京大学大学院農学生命科学研究科の堤伸浩教授と藤本優准教授らの研究グループは、シロイヌナズナを用いて、植物の細胞外や細胞膜への物質輸送を担うVAMP72という膜交通タンパク質が、PICALM1という別の膜交通タンパク質のはたらきにより、細胞膜から細胞内へ回収され「リサイクル」されることを発見しました(図1)。また、PICALM1によるVAMP72の細胞膜からの回収が破綻すると、根や茎をはじめとした器官の成長に広く悪影響が生じることも判明しました。動物細胞では、VAMP72とよく似たタンパク質が植物とは全く異なる仕組みにより細胞膜から回収されています。また、PICALM1と類似のタンパク質は、陸上植物の進化の過程において劇的にその数が増加していることも分かっています。これらのこととあわせて本研究の成果は、植物の器官成長を支える基盤的なシステムの確立に、膜交通タンパク質をリサイクルする仕組みの多様化が重要な役割を果たしたことを示しています。
 本研究の成果は、米国東部時間2020年9月21日の週に国際学術誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)に掲載されます。
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発表雑誌

雑誌名
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)
論文タイトル
Longin R-SNARE is retrieved from the plasma membrane by ANTH domain-containing proteins in Arabidopsis
著者
Masaru Fujimoto*, Kazuo Ebine*, Kohji Nishimura*, Nobuhiro Tsutsumi, and Takashi Ueda(*Co-first author, Corresponding author)
DOI番号
10.1073/pnas.2011152117