発表者
北沢宗大(北海道大学大学院農学院 博士課程)
先崎理之(北海道大学大学院地球環境科学研究院 助教)
松宮裕秋(信州大学大学院総合理工学研究科:当時)
原 星一(信州大学農学部:当時)
水村春香(東京大学大学院農学生命科学研究科 博士課程)

発表概要

 北海道大学大学院農学院博士後期課程の北沢宗大氏と同地球環境科学研究院の先崎理之助教は、信州大学大学院総合理工学研究科の松宮裕秋氏、同農学部の原 星一氏(ともに卒業済)、東京大学大学院農学生命科学研究科博士後期課程の水村春香氏と共同で、絶滅危惧鳥類・アカモズの日本国内における繁殖個体数と、過去100年間の繁殖分布域の縮小程度を明らかにしました。
 アカモズ亜種アカモズ(Lanius cristatus superciliosus)はかつて、北海道大学構内や長野市善光寺、東京都23区内をはじめとして、北海道から本州にかけての多くの地域に普通に生息していました。しかし、1990年代以降に劇的な個体数・分布域の減少が報告され始め、現在は環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に選定されています。こうした状況にもかかわらず、現在は国内の「どこに」「どのくらい」のアカモズが生息しているのか、これまで「どの程度」減少してきたのかは定量的に調べられてきませんでした。
 そこで本研究では、日本全国を対象として、2010~2019年にアカモズの新規繁殖地の捜索と、既存の繁殖地における個体数調査を実施しました。その結果、本亜種の国内の繁殖個体数はわずか332個体程度であることが判明しました。更に、調査で明らかになった現在の分布域を、過去の文献やデータベースから推定された過去の分布域と比較したところ、過去100年間で本亜種の分布域が90.9%縮小したことが明らかになりました。これらの数値は、国際自然保護連合(IUCN)が定義するレッドリストカテゴリーのうち、絶滅の危機に瀕している種(EN)の基準を満たし、深刻な絶滅の危機に瀕している種(CR)の基準にも迫っています。そのため、本亜種は絶滅の危険性が非常に高く、一刻も早い保全活動の実施が望まれます。
 本研究成果は、2020年11月19日(木)公開のBird Conservation International誌でオンライン出版されました。
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発表雑誌

雑誌名
Bird Conservation International
論文タイトル
Drastic decline in the endemic brown shrike subspecies Lanius cristatus superciliosus in Japan
著者
MUNEHIRO KITAZAWA, MASAYUKI SENZAKI, HIROAKI MATSUMIYA, SEIICHI HARA and HARUKA MIZUMURA
DOI番号
10.1017/S0959270920000556