発表者
友居 洋暁 (ロンドン大学衛生熱帯医学大学院/長崎大学大学院 熱帯医学グローバルヘルス研究科 博士課程)
大澤 隆文(東京都立大学大学院 都市環境科学研究科 客員研究員)
Jay Mar D. Quevedo(東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 特任研究員)
香坂 玲(東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 教授)

発表のポイント

  • 気候変動などの環境問題への取組に関する各国間の基本原則として知られる「共通だが差異ある責任(CBDR)」原則が生物多様性の分野にも適用可能かどうかを定量的に評価した初の研究です。
  • 生物多様性の損失に対する寄与は、評価対象の129か国の中で日本が最も大きく、次いでインド、中国が大きいことが分かりました。先進国全体としての寄与は途上国全体に比べて大きかったものの、CBDR原則に基づいて一概に先進国がより重い責任を負うべきだと言えるほどの偏りは見られませんでした。
  • 2022年生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)などの国際交渉の機会においてはこうした科学的な評価に基づく意思決定への期待が高まっています。

発表概要

図1:横軸に生物多様性の損失への寄与(マイナス面)、縦軸に生物多様性の保全に対する累積資金拠出額(プラス面)をとって対比したもの。近似直線より上側にある国は相対的に生物多様性の損失への責任に比してより大きな貢献をしていると言える。 (拡大画像↗)


図2左:生物多様性の損失に対する寄与率が大きい国を順に示したもの。図1右:同じグラフを世界銀行による高所得国、中所得国、低所得国の分類に基づいて色分けしたもの。(拡大画像↗)

 生物多様性分野においては、長年CBDR原則の適用の是非を巡って各国の間で倫理的または政治的な観点から議論がなされてきました。そこで、同原則の適用可能性についての科学的な根拠を提供するため、生物多様性の損失に対する各国の寄与率を5つの要因(土地改変、自然資源の過剰搾取、気候変動、汚染、侵略的外来種)に分けて総合的に評価しました。加えて、生物多様性の保全に対する貢献度を測る尺度として各国の資金拠出の累積額も算出し、各国の生物多様性の損失への寄与(マイナス面)と照合しました。
 その結果、生物多様性の損失に対する各国の寄与は上位10か国で全体の46%を占めており、その中でも日本がワースト1位(約8%)で、インド、中国、米国、英国が続いていました。他方、資金拠出でも日本は世界全体で2番目の規模であり、責任の大きさに応じた取組を行ってきていることが示されました。これまではCBDR原則として、先進国と途上国という二分論に基づき先進国がより多くの責任を負うべき、または資金を提供すべきという議論が展開されてきましたが、本研究の結果はそうした単純な分類は適当ではなく、定量的なデータや各国の最新の財政状況に基づいた政策決定をしていく必要があることを示唆するものでした。

*尚、発表内容は執筆者が所属する組織の公式見解ではなく、個人の研究者としての内容である。同時に締約国の議論の参考に供するが、その議論を予見・方向性を示すものでは無い。

発表雑誌

雑誌名
Ecological Indicators
論文タイトル
Is “Common But Differentiated Responsibilities” principle applicable in biodiversity? – Towards approaches for shared responsibilities based on updated capabilities and data
著者
Hiroaki Tomoi, Takafumi Ohsawa, Jay Mar D. Quevedo, Ryo Kohsaka* *Corresponding author
DOI番号
10.1016/j.ecolind.2022.109628
論文URL
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470160X22011013#!

問い合わせ先

東京大学大学院農学生命科学研究科 森林風致計画学研究室
教授 香坂 玲(こうさか りょう)
Tel:03-5841-5218
E-mail:kohsaka.lab<アット>gmail.com  <アット>を@に変えてください。
    kohsaka<アット>hotmail.com <アット>を@に変えてください。
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