発表内容

 当研究科生物材料科学専攻の砂川直輝特任助教と五十嵐圭日子准教授の研究チームと、有人宇宙システム株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:古藤 俊一、以下「JAMSS」)は、宇宙環境下でのセルロース酵素合成に世界で初めて成功しました。

 セルロースの合成は、JAMSS が提供する高品質タンパク質結晶生成サービス「Kirara」を利用し、国際宇宙ステーション(International Space Station、以下ISS)内で行いました。五十嵐准教授らが提供する酵素試料(参考文献)をJAMSS が独自に開発した小型恒温槽に搭載し、2019 年12 月6 日にISS へ打ち上げたものです。約1 ヶ月間宇宙環境に置き、2020 年1 月8 日に地球へ帰還しました。

 セルロースは地球上に最も豊富に存在し再生可能な生物資源(バイオマス)ですが、水よりも重い比重のために地上で酵素合成すると重力によって沈澱します。一方、宇宙の微小重力環境下では、物質は重さにより沈澱することなく均一に混ざり、結晶は自然対流の影響を受けることなく成長することが知られています。そこで今回、世界ではじめて宇宙でのセルロース酵素合成を試み、地上とは異なる均一なセルロースを得ることができました。今後、宇宙環境で得られたセルロースの構造解析を進め、その特性を明らかにしていく予定です。地上と異なる構造・性質のセルロースが得られることにより、新たな素材研究の可能性を切り開くものと期待されます。

参考文献

Hiraishi, M., Igarashi, K., Kimura, S., Wada, M., Kitaoka, M., and Samejima, M., Synthesis of highly ordered cellulose II in vitro using cellodextrin phosphorylase, Carbohydr. Res. 344:2468-2473 (2009)

 

参考情報

本件のプレスリリース(JAMMS WEBサイト 2020年3月16日)
世界初、宇宙でのセルロース酵素合成に成功しました!

 

問い合わせ先

東京大学 大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 森林化学研究室
准教授 五十嵐 圭日子(いがらし きよひこ)
Tel:03-5841-5258
Fax:03-5841-5273
E-mail:aquarius<アット>mail.ecc.u-tokyo.ac.jp <アット>を@に変えてください。