当研究科 応用生命工学専攻 微生物学研究室の吉田稔教授が令和4年度文化功労者として顕彰されました。


吉田稔先生の文化功労者顕彰をお祝いして

 このたび本研究科教授の吉田稔先生が、化学生物学に関する顕著な業績により、2022年度の文化功労者に選出されました。吉田先生は昭和56年に本学農学部農芸化学科をご卒業後、同大学院、本学農学部助手を経て、平成7年に同助教授となられました。その後平成14年に理化学研究所に異動され主任研究員に着任、また同29年より本学農学部教授を分任、令和4年より理化学研究所研究政策審議役にご就任されています。

 この間、先生は一貫して新規生理活性物質の探索とその化学生物学に関する研究・教育に取り組まれ、基礎と応用の両面から数々の業績を挙げられました。その代表的なものとして、白血病細胞分化誘導物質トリコスタチンAが世界初の特異的ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であることの解明、抗がん活性物質レプトマイシンの標的分子解明からタンパク質核外輸送シグナル受容体の発見、世界初のスプライシング調節薬スプライソスタチンの創成などが挙げられます。これらを通じヒストンアセチル化によるエピジェネティクスの制御機構、タンパク質核-細胞質間輸送制御機構、スプライシング調節とイントロン配列の持つ隠された機能などを明らかにするとともに、全く新しい抗がん剤開発の基礎を作られ、現在ではその一部がすでに実用化されています。また、新規活性物質の発見と作用機序研究を行うための大規模高速スクリーニングの基盤設備を構築するなど、わが国全体のアカデミア創薬研究を牽引して来られました。一方、日本農芸化学会会長、日本がん分子標的治療学会理事長など多くの学会の要職を歴任するなど、学術の発展と普及にも大きく貢献されています。

 先生はこれまで、バイオインダストリー協会賞、日本農芸化学会賞、日本学士院賞など数多くの賞を受賞されています。このたびさらに文化功労者として顕彰されたことは、まことに先生のご業績にふさわしく、心よりお祝い申し上げるとともに、先生の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

(大学院農学生命科学研究科・農学部 有岡学)