当研究科応用生命化学専攻元教授の篠崎和子名誉教授が日本学士院賞を受賞されました。日本学士院賞は明治43年に創設され100年以上の歴史を誇り、 学術上特に顕著な研究業績に対して与えられる賞であり、ノーベル賞受賞者が多数名を連ねる我が国で最も権威ある学術賞のひとつです。

<日本学士院賞 受賞理由>
研究題目:植物の環境ストレス応答と耐性獲得に関する制御ネットワークの研究(共同研究)

 篠崎一雄氏と篠崎和子氏は植物が乾燥や低温などの環境ストレスに応答して、耐性を獲得する仕組みの解明を総合的に進めてきました。両氏はシロイヌナズナを用い分子生物学やゲノム科学を駆使して、環境ストレスにより誘導される遺伝子の制御には植物ホルモンのアブシジン酸に依存する経路と非依存性の経路が存在することを発見しました。それぞれの経路で誘導される遺伝子発現に関わる転写因子の同定と制御機構の研究は国際的に高い評価を得ています。さらに、水分ストレスを感知する受容体、細胞内での情報伝達を行うタンパク質キナーゼやアブシジン酸の合成、分解、輸送に関わる因子も明らかにしました。また、乾燥を感知すると根で合成され導管に放出されたペプチドが葉まで輸送され、アブシジン酸の合成を誘導する機構の全容を解明しました。これらの研究は基礎科学の大きな成果としてだけでなく、地球規模の課題である環境保全や食糧増産など応用に関する国際共同研究の推進につながっていることも特筆されます。

日本学士院賞授賞の決定について:https://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2023/031301.html#003
日本学士院賞について:http://www.japan-acad.go.jp/japanese/activities/index.html
日本学士院:http://www.japan-acad.go.jp