農学部150周年記念関連シンポジウム「日本型ネイチャーポジティブとは?」開催報告
農学生命科学研究科・農学部は、3月26日(水)午後、弥生講堂一条ホールにおいて「日本型ネイチャーポジティブとは?」を開催しました(協力:東京大学GX学生ネットワーク(GXSN)およびアースウォッチ・ジャパン。後援:埼玉県入間郡三芳町および岩手県陸前高田市)。
会場には約130名の参加があり、第1セッションでは東京大学の学生が主導する活動について、また第2セッションでは若手スタートアップなどによるビジネスと環境の結節点について、さらには第3セッションでは地域振興とネイチャーポジティブについて、それぞれ議論を行いました。議論をまとめると次のようになります。
多様な生き物を利用しつつ守ってきた日本型のネイチャーポジティブ:近年国際社会でネイチャーポジティブとの単語が使用されていますが、日本では、言葉が生まれるはるか前から自然と共生する活動が行われていました。日本の自然環境、すなわち降雨量が多い、傾斜地や斜面が多い、草の成長が早い、狭い土地をモザイク状に多様な用途で利用しそれぞれの土地やその境界にも固有の生き物がいる、といった環境条件に合う形で、人間と自然が共生してきました。人間が食料や水、薪などを得るために人間活動を自然と調和させる取組が続いていました。しかし、近年、国土の一部が極度に都市化する一方で、別の場所は放棄地となるなどの二極分化が進み、その双方で生き物が減っています。
生き物の力で社会を変えるために:この中で、過疎化しつつある地域の振興、学生団体や市民団体による生態系等の実態調査、会津のリジェネラティブな農業やそれを支えるアオガモロボ、山梨や長野での昆虫と共生する果樹栽培、害獣の駆除捕獲、エクアドルアマゾンでの小規模なカカオ農家との連携、国際的なサステナブルファイナンスの実現化に向けた動きなど、多様な活動の重要性が議論されました。多様な生態系を保全するためには人間活動も多様性が重要との点が浮き彫りになったと考えます。
東大発の産官学ネイチャーポジティブ・ネットワークの立ち上げ:カーボンニュートラルへの取組と比較して、ネイチャーポジティブへの取組では人間側の活動の多様性がポイントであること、また成果の数値的な把握が難しい中では活動の継続性もポイントになることが分かってきました。これを社会全体でのバックアップするため、今回の参加者でネットワークを立ち上げています。このシンポジウムは昨年に続き第2回目になりますが、引き続きネットワークの強化に取り組みたいと考えています。
【ご登壇氏名(五十音順)】
有田 一貴(小田急電鉄/ハンターバンク)
伊藤 雪穂(アースウォッチジャパン)
宇野 宏泰(株式会社ZEN-BU・自然農法無の会)
江澤 孝太朗(ママノチョコレート)
小谷あゆみ(農ジャーナリスト)
佐々木拓(陸前高田市長)
澤登 早苗(フルーツグロアー澤登)
竹内 四季(Innoqua)
津田敦(東京大学理事)
中嶋康博(東京大学大学院農学生命科学研究科長)
中野和真(環境三四郎:東京大学農学部4年)
中村 哲也(ニューグリーン)
林 伊佐雄(埼玉県三芳町長)
橋口功大(生物学研究会:東京大学教養学部文科一類2年)
畑上太陽(飯舘村ホッププロジェクト:東京大学農学部4年)
藤原啓一郎(LA-Lab・長野県上田市)
松本望美(狩人の会:東京大学農学部4年)
松本百永(あぐりえこん。:東京大学農学部4年)
水野那奈子(東京大学GX学生ネットワーク(GXSN):東京大学工学部3年)
宮下 直(東京大学大学院農学生命科学研究科)
諸岡 孟(一般社団法人 WE AT)社会課題解決を目指すシステム
八木信行(東京大学大学院農学生命科学研究科)
山口空(東京大学大学院農学生命科学研究科特任研究員)
ユー,イヴォーン(EY新日本有限責任監査法人)