10月1日に下記の本が朝倉書店から刊行されます。

『グローバル変動生物学 ―急速に変化する地球環境と生命―』
エリカ B. ローゼンブラム(著)/宮下 直(監訳)/深野 祐也・安田 仁奈・鈴木 牧(訳)
定価 13,200 円(本体 12,000 円+税) B5判/344ページ

 地球規模で進行している生態系や生物多様性の劣化とその回復に向けた変革のあり方について、生物進化、相互作用、物質循環、保全戦略、社会正義など、包括的視点からまとめた金字塔的な教科書です。
 国内に類書がないだけでなく、古くて新しい課題の動向や最近のトピックが満載で、訳者一同も大変勉強になりました。また広範な分野をカバーしているにも関わらず単著であるため、主張の一貫性も読み取れます。さらにカラー図版も満載で、純粋に楽しめる本です。やや高価ですが、是非お勧めしたい本です。なお、訳者全員が、現在または過去に当研究科に関わっていた人です。

目次

第1章 グローバル変動生物学への招待
 研究の発展/新たな地平/研究デザイン/研究アプローチ/研究ツール/基本知識:データの表現法/データで見る:自然の経済価値/発展:生物多様性の価値
第2章 生命の歴史
 地球上の生命の出現/生物の進化と多様化の歴史/生物多様性の進化の仕組み/種分化と絶滅/基本知識:系統樹とは?/データで見る:生命の環/発展:生物的な階層
第3章 人類の誕生
 はじめに/初期ヒト科の進化/現生人類の出現と拡散/初期文明による環境への影響/基本知識:種名とは何か?/データで見る:氷河期の遺伝学/発展:人類の進化的成功
第4章 人新世
 人新世とは?/現代の人口増加パターン/現代文明による環境への影響/環境変動に対する脆弱性/基本知識:気候の測定/データで見る:送粉者と農薬/発展:過去と現在の気候変動
第5章 主要な応答:移動
 生物の移動/地理的範囲とは?/地理的範囲を決める要因/人為によらない地理的範囲の変化/人為による地理的範囲の変化/生息範囲の変化の予測/基本知識:ニッチとは何か?/データで見る:ヨセミテの100 年の変化/発展:グローバル化と外来種を考える
第6章 主要な応答:調節
 表現型可塑性とは?/表現型可塑性による調節能力/地球変動ストレスと表現型可塑性/表現型可塑性のメカニズム/表現型可塑性の評価と予測/表現型可塑性と長期的な存続可能性/基本知識:遺伝のメカニズムとは?/データで見る:フェノロジーと地球温暖化/発展:都市化
第7章 主要な応答:適応
 適応に必要な条件/自然選択による進化/地球環境変動に対する適応/適応の検出と予測/適応による絶滅の回避/基本知識:遺伝的変異の由来/データで見る:ミジンコのタイムマシーン/発展:サンゴ礁
第8章 主要な応答:死滅
 個体,個体群,種の存続の関連性/地球変動ストレスによる絶滅/絶滅リスクの推定/絶滅リスクの世界的なパターン/第6の大量絶滅/基本知識:絶滅の負債とは?/データで見る:第6の大量絶滅/発展:両生類の減少
第9章 群集レベルの反応
 生物間相互作用/地球変動が生物間相互作用に及ぼす影響/絶滅が群集に及ぼす影響/カスケード効果とは?/基本知識:地上食物網と地下食物網/データで見る:相利共生の崩壊/発展:ケルプの森と栄養カスケード
第10章 生態系レベルの反応
 生物地球化学的循環とは?/地球変動が生態系に及ぼす影響/地球変動が地球システムに及ぼす影響/生態系の崩壊/生態系の回復力/基本知識:生物多様性ホットスポット/データで見る:土壌の温室効果ガス/発展:地球変動への応答に影響を与える要因
第11章 地球変動時代の環境保全
 保全の優先順位/保全活動の対象レベル/生物集団の保全戦略/生息域の保全戦略/順応的管理とは?/基本知識:気候変動緩和策/データで見る:進化的多様性を最大化する/発展:新技術と保全倫理
第12章 生物多様性と人間社会の利益を一致させるために
 人間-自然連関システムとは?/生物多様性保全を支援するための社会的手段/個人による生物多様性保全への支援/団体による生物多様性保全への支援/政治行動による生物多様性保全への支援/予想される未来/基本知識:I=PAT 式とは?/データで見る:動的な保全のための報奨金制度/発展:環境についての世界観