当研究科の特任研究員 山口空さん(当時 生物材料科学専攻 森林化学研究室 博士3年)が、令和5年度東京大学総長賞を受賞しました。平成14年度に創設された本賞は、「本学の学生として、学業、課外活動、社会活動等において特に顕著な業績を挙げ、他の学生の範となり、本学の名誉を高めた者」に対して、総長が表彰を行うものです。学業分野の選考区分においては、当研究科の博士課程学生では7回目の受賞となりました。


受賞対象となった研究

推薦題目は、「バイオエコノミーおよび脱炭素社会構築の鍵酵素「セルラーゼ」の反応機構」です。昨今、地球規模での気候変動がもたらす危機を食い止めるために、その原因の一つである化石資源の過剰な利用から生物資源(バイオマス)の利用への急速な移行が図られています。そこで期待されている技術の一つが、地球上で最も豊富に存在するバイオマスである木材の主成分「セルロース」を効率的にぶどう糖へと分解し、バイオものづくりに提供するプロセスです。本受賞者は、きのこが木を分解するために生産する酵素「セルラーゼ」の耐熱化メカニズムや触媒メカニズムを明らかにすることを目指し、生化学的および構造生物学的観点から研究を行い、博士論文にまとめました。また、上述のような研究室での基礎研究と並行して、当研究科のOne Earth Guardians育成プログラムや全学の組織等における取り組みを通じ、脱炭素社会の構築に向けた社会活動や発信にも尽力してきました。


受賞者コメント

「農学部および農学生命科学研究科では、生物素材化学専修に進学してから7年間、波がありつつも濃い学生生活を送りました。特に、所属の生物材料科学専攻では日々の研究をサポート・応援していただき、さらにWithコロナで学べることを模索するなかで、自分の専門分野以外の講義や課外活動にも多く参加することとなり、様々な専修・専攻の方々にお世話になりました。また、本研究科の教職員を中心に運営されるWINGS環境調和農学国際卓越大学院教育プログラムは、博士課程に進学するきっかけにもなりました。ご指導・ご支援をいただいた全ての皆さまに御礼申し上げます。」