プロフィール

足立 博之

足立 博之

ADACHI Hiroyuki

専攻 応用生命工学専攻 Department of Biotechnology
研究室 分子生命工学研究室 Laboratory of Molecular Biotechnology
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

動物の細胞分裂の研究は、医学・薬学と繋がっている

 みなさんの体を作っている動物細胞の細胞分裂の仕組みを、細胞の構造が動物そっくりな細胞性粘菌という微生物を使って調べています。細胞分裂では、最初に核が分裂し、その後、細胞質が二分されますが、特に後半の細胞質分裂で、どんな分子がどのように働いて細胞の形態を変化させ、細胞が2つに分かれるのか研究しています。生物が生物であるがゆえんの細胞分裂ですが、特に細胞質分裂の仕組みはまだまだ未解明です。細胞質分裂の解明は、生物がどうやって増殖するのかという理学的な問いに答えるだけでなく、増殖してはいけない細胞が増殖してしまうガンの治療に応用できる可能性があるため、応用の意味でも重要です。
 細胞質分裂の研究は、細胞形態を変化させる仕組み、専門用語では細胞運動の研究ですが、その仕組みに関わる分子は、たとえば、白血球が外部から進入したバクテリアに向かって動いていって(細胞遊走)、それを取込んで殺してしまう(貪食作用)といった別の細胞運動の仕組みにも関わることが多いので、自然とこれらの現象も研究することになります。これらの現象の解明も、ガンの浸潤や免疫といった医学・薬学分野への応用が期待できます。

教育内容

細胞分裂を解明する微生物、細胞性粘菌

 研究室では、細胞質分裂ができないために細胞が多核になってしまう細胞性粘菌の変異株を分離し、その変異遺伝子を明らかにすることにより、ヒトを含む動物細胞に共通の細胞質分裂関連のタンパク質を見つけ出し、その詳細な機能を、生化学および顕微鏡で解析しています。古くはIQGAPというタンパク質を、最近では、GflBというタンパク質を見つけて解析しました。また、前項でご説明した通り、細胞質分裂に加えて、細胞遊走(特に、誘因物質に向かって動く走化性)、貪食作用、マクロ飲作用における機能も解析します。
 授業では、担当している「細胞微生物学」の一部の時間を使って、生物としての細胞性粘菌とその基礎研究への利用について、研究室での成果を交えて紹介しています。
 研究室の学生に対しては、真理探究のための実験を夢をもって行なうことの楽しさと、注意深く厳しい態度で実験することの重要さの両方を教えようとしています。テーマの内容からか、医学・薬学系の企業や大学の研究者を多く輩出しています。

共同研究や産学連携への展望

貪食作用のモデル生物でもある細胞性粘菌

 細胞性粘菌は、自然界では細菌を餌として貪食作用で取込んで増殖しますが、実験室でも、寒天培地上にべったり生やした大腸菌などの細菌を食べさせてハロを作らせ、そのハロを拡大させながら増殖させることが可能です。私の研究室では、この実験系を使って、細胞性粘菌に食べられるために細菌が備えているべき性質を調べる研究も行なっています。その成果を利用すれば、細胞性粘菌側の遺伝子を改変することにより、食べることができる餌の種類をコントロールすることができるかもしれません。このように改変した細胞性粘菌の貪食細胞またはそれを創成する過程で得られた知見は、医学・薬学や環境問題に何らかの貢献ができるかもしれないと期待しています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  微生物、動物、細胞性粘菌、細胞運動、細胞質分裂、飲作用、貪食作用、細胞遊走、走化性、細胞骨格、アクチン、ミオシン、微小管、シグナル伝達、抗ガン剤、ガンの浸潤、ガンの転移、貪食細胞、IQGAP、アクチン結合タンパク質、Rhoファミリー、Rasファミリー、低分子量GTPアーゼ、低分子量Gタンパク質、共焦点レーザー顕微鏡、分裂溝、収縮環、中央体、貪食口、ファゴシティックカップ、マクロピノシティックカップ、食胞、ファゴソーム、マクロピノソーム、仮足、葉状仮足、糸状仮足、後方退縮、MKLP
キーワード2  :  環境問題、資源のリサイクル