プロフィール
一般の方へ向けた研究紹介
葉緑体とミトコンドリアの遺伝情報の制御で地球と社会の未来に貢献する
人類を含む地球生態系へのエネルギーの入り口/光合成は、植物細胞の中の葉緑体が担っています。また、植物のすべての細胞と生活環を支える呼吸や代謝の一部はミトコンドリアが担っています。人類と生態系を支える植物に必須の二つの細胞小器官、葉緑体とミトコンドリアは、内部に核とは別の遺伝情報「オルガネラゲノム」を持っており、そこには光合成/呼吸/代謝の重要パーツの設計図がコードされています。しかし、これらは核ゲノムと比較して人為的な改変が難しかったため、オルガネラゲノムの基礎理解や、それらを改変改良することにより期待される新しい植物品種改良などの応用展開も滞ってきました。私はこれまで、たくさんの共同研究者と学生らとともに、2019年に植物ミトコンドリアについて、2021年に葉緑体について、それぞれのゲノム編集に世界で初めて成功することができました。これらの技術を軸に、現在、さらなる技術改良、基礎研究、応用展開、植物の品種改良につなげる社会実装に取り組んでいます。たくさんの共同研究者とともに、このオルガネラゲノムを軸とする研究領域を「日本のお家芸」にすることが現在の目標です。
教育内容
知の先端の探索を通じた科学的姿勢/実行力/対応力の習得
講義は、学部の細胞生物学や、大学院の植物分子遺伝学特論などを担当しており、植物遺伝育種科学につながる基礎を教えています。研究室に配属する学生や大学院生には、それぞれ最先端に通じる研究、世界初に触れる謎解きに挑戦してもらっています。研究と実験活動(情報収集による知の境界線の明確化、未知と疑問の言語化、解明手法の理解/立案/習得、検証の実行、実験結果の明確化と繰返し、外部情報を併せた考察展開、発表と論文執筆による知の公表と伝達)は、いずれもが簡単に進まず、苦労が多い現実作業でありますが、その過程こそ実社会での活動と活躍に通じる重要な教育だと考えています。この「研究と実験活動」を通じて、卒業生がどの分野に進んでも役にたつ科学的姿勢と実行力/現実対応力を身につけてもらうことを目標にしています。
共同研究や産学連携への展望
植物オルガネラゲノムの制御で世界をよりよくする
核ゲノムに比べてその1%以下の遺伝情報量しかないオルガネラゲノムですが、葉緑体とミトコンドリアの機能の鍵因子を多数コードしています。その改変困難性から未利用でしたが、改良による潜在能力が高いゲノム情報です。葉緑体ゲノムの改変は、植物/作物の光合成/生長能力/収量の向上、CO2吸収同化能力の向上、低肥料化、省力化などにつながります。また、世界中で使われているF1品種の種子生産にミトコンドリアゲノムコードの細胞質雄性不稔遺伝子が未解明のまま利用されてきましたが、私たちの技術で、現在その多様な分子機構の解明が進んでおり、現在進行形で大きく貢献しています。ゲノム編集技術はその正確性と最小変化性から、また社会受容と規制の点でも、現在多くの国で社会実装が進みつつあり、これも応用利用展開への期待できるポイントです。「開発した技術は使われてこそ価値がある」と考えておりますので、社会と地球の未来へのポジティブな貢献を大きな目標とし、農業関連のバイオテクノロジー技術開発、品種改良などに貢献したいと考えております。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 植物、ミトコンドリア、葉緑体、ゲノム編集、オルガネラゲノム、細胞質ゲノム
キーワード2 : 二酸化炭素、食糧問題、収量増加、低窒素肥料