東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部

腸管免疫系を介した食による免疫調節機構を解明する

免疫系は、私たちの体を病原体感染から守るしくみですが、腸管は、病原体の脅威にさらされるだけではなく、私たちが日々摂取する食物、またヒトでは40～100兆個ともいわれる腸内共生菌が異物として存在し、最大級の免疫系を備えています。そして食物は、この腸管免疫系を介して、免疫応答に影響を与えます。その中で、食物摂取により引き起こされた抗原特異的免疫反応が私たちの体を傷つけてしまう疾患が食物アレルギーで、食物が免疫系に与える負の影響といえます。一方で、食物の摂取により免疫応答を好ましく調節することが可能であることも明らかになってきています。当研究室では、腸管免疫系の応答機構の解明を通して、これを標的とした食による免疫制御や、食物アレルギーの制御法開発を目指しています。

腸管免疫ワールドを伝える

腸管免疫系には、リンパ球や樹状細胞などのいわゆるプロフェッショナルな免疫細胞以外にも、栄養を吸収する腸管上皮細胞、さらには、抗菌ペプチドや粘液を産生する細胞、神経が、精緻なネットワークを作っています。この腸管免疫系に、私たちが日々摂取する食品の成分が作用します。一度知るとはまってしまう、腸管免疫系と食品との相互作用の世界の魅力を研究を通して伝えたいと考えています。

腸管免疫系を標的とした機能性食品の開発へ

免疫系を調節する機能性食品は、日本そして世界の人々の健康の増進に貢献できることを確信しています。私たちの研究室では、このような機能性食品―日本の制度では機能性表示食品や特定保健用食品の開発―につながるような共同研究を食品企業などと展開しています。免疫機能食品による感染防御能増強や炎症抑制は、食のリスクの低減につながり、食物アレルギーの制御法開発とともに、広い意味での食の安全の向上に貢献すると考えています。