プロフィール

伯野 史彦

伯野 史彦

HAKUNO Fumihiko

専攻 応用動物科学専攻 Department of Animal Resource Sciences
研究室 動物細胞制御学研究室 Laboratory of Animal Cell Regulation
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

インスリン様生理活性を制御することで健康寿命の延伸を目指す!

 超高齢社会に突入した日本において、健康寿命の延伸を目指した研究の重要性がますます高まっています。このような研究の対象疾患として、生活習慣病に位置づけられる循環器系疾患や糖尿病、さらに悪性腫瘍・脳神経疾患などを挙げることができます。私達は、インスリンやインスリン様成長因子(IGF)という二つのホルモンに着目し、これらのホルモンの生理活性(インスリン様生理活性)を適切に制御することに上記疾患の発症を診断・予防し、健康寿命の延伸を目指す研究を展開しています。これまでに、
 1)インスリン様生理活性はアミノ酸などの栄養因子によって調節されていること
 2)アミノ酸などの栄養因子が直接シグナル(代謝制御性アミノ酸シグナル)となってインスリン様生理活性を誘導すること
 3)インスリン様生理活性や代謝制御性アミノ酸シグナルの調節に異常が生じると上記の多くの疾患を発症すること
を明らかにしてきました。
 インスリン様生理活性が調節されるメカニズムを分子レベルで解明し、AIや数理解析を駆使することで、上記の多くの疾患の発症を未病状態で診断し、医薬だけでなく栄養を加えた『医食薬協創』の観点からテーラーメイド先制医療を目指します。また、代謝制御性アミノ酸シグナルを調節することによる霜降り豚肉や白肝など高品質食資源の開発にも関わっています。

教育内容

インスリン様生理活性が制御される分子メカニズムを解明する

 最近我々は、食事中のタンパク質を制限すると、成長遅滞ばかりでなく、脂肪肝・筋肉への脂肪交雑・皮下脂肪の肥厚・内臓脂肪の増加・インスリン感受性の増加・糖新生活性の低下など、体の様々な組織で多くの代謝変化が観察されることを発見しました。この詳細なメカニズムを解析したところ、タンパク質の構成分子であるアミノ酸が組織ごとに異なる機構で様々な表現型の発現を制御していることを明らかにしました。
また、インスリンやIGFの生理活性(インスリン様活性)が過剰に促進されたり抑制されたりすると、がん・糖尿病などの疾病を誘発することが知られています。我々は、インスリン様生理活性が調節される分子メカニズムの解明に取り組み、インスリン抵抗性やがん化などに関わるタンパク質を多数単離、その機能を明らかにしています。
 そこで、本研究室では、次に挙げるような研究テーマを推進していきます。
 1. インスリン様シグナルが過剰に促進または抑制される分子メカニズムをシグナル分子と結合するたんぱく質に着目しながら明らかにする
 2. アミノ酸自身が直接シグナルを伝達して代謝を制御する「代謝制御性アミノ酸シグナル」の実態を明らかにする
 ヒトやマウス、ラット、ゼブラフィッシュやショウジョウバエなどのモデル生物を用いて明らかにした基礎研究を基盤に、栄養学の常識を覆すような革新的な医薬食共創研究を進めて行きたいと考えています。
 上記のような研究活動や教育活動を通して、「自ら研究テーマを提起し解決する」、自立した研究者の育成を目指しています。

共同研究や産学連携への展望

生活習慣病を診断・予防・治療する技術の開発

 上述したように、食事中のタンパク質を制限すると、体の様々な組織で多くの代謝変化が観察されます。また、タンパク質の構成分子であるアミノ酸の血中濃度バランスが、組織ごとに異なる機構で様々な表現型の発現を制御しており、多くの生活習慣病の発症の原因となっていることも明らかにしています。このような結果から、血中アミノ酸濃度のバランス(血中アミノ酸プロファイル)の測定・改善は、生活習慣病の未病診断、食による個別先制医療ばかりでなく、フレイル予防、スポーツ栄養学、霜降り豚肉や白肝などの高品質食資源の開発など様々な分野での応用が可能となります。
 また、がんや糖尿病などのモデル動物・細胞を用いて、インスリン様生理活性の発現が調節される分子メカニズムを解明し、シグナル経路の活性制御に重要なタンパク質を複数単離してきました。これらの新規タンパク質の機能や活性を制御する化合物の単離にも成功しています。
 血中アミノ酸プロファイルを改善する食事や、インスリン様生理活性を制御する化合物は、多くの疾病の治療・予防への応用が期待できるため、学内外の研究者や企業との共同研究を希望しています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  動物、細胞、ラット、マウス、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、たんぱく質栄養、血中アミノ酸プロファイル、 糖脂質代謝、代謝制御性アミノ酸シグナル
キーワード2  :  未病診断、先制医療、健康寿命の延伸、高品質食資源、未利用資源、医薬食共創研究、糖尿病、成長遅滞、生活習慣病、メタボリックシンドローム