プロフィール

伊原 さよ子

伊原 さよ子

IHARA Sayoko

専攻 応用生命化学専攻 Department of Applied Biological Chemistry
研究室 生物化学研究室 Laboratory of Biological Chemistry
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

匂い受容体の理解・香り活用促進にむけて

 匂いは、私達に快・不快といった感情や、リラックス効果などの心理作用をもたらしますが、匂い識別の出発点となるのは、匂い物質とそのセンサータンパク質、”匂い受容体”の結合です。ヒトでは匂い受容体が約400種類存在し、異なる匂いに応じて、複数の受容体が異なる応答パターンを示し、そのシグナルが脳に伝達され、知覚へと至ります。しかし、匂い受容体応答パターンと知覚との関連性についてはほとんど明らかになっていません。また、匂い受容体の一部は遺伝子配列の個人差により影響を受けることがわかっていますが、その結果、知覚にどのような影響があるかについても限られた知見しかありません。こういった点を含め、匂い知覚の仕組みを匂い受容体を切り口として理解すべく、研究を進めております。具体的には、遺伝子の個人差を区別できるように構築したアッセイでの受容体応答パターンをもとに、匂いの感じ方との関連性を調べ、特定の匂い知覚に鍵となる受容体や、個人により感じ方の差を生み出す受容体を明らかにしようとしています。これらの研究を通じて、近年、実社会で期待が高まっている香り活用の促進に貢献したいと考えています。

教育内容

目の前のデータを大切に

 学部生対象の学生実習、”応用生命化学実験”において、酵素の取り扱いに関する基礎的実験の指導を他の先生方と共に担当する他、隔年で実施される大学院講義”細胞調節生化学”にて、膜受容体とそのシグナルに関する講義を行っています。また、所属研究室においては、匂い受容体をはじめとする化学感覚受容体研究の指導の一部を担当し、共に手を動かしながらの実験技術指導も実施しています。様々な情報を瞬時に入手できる便利な時代、効率が重んじられ、研究にも見通しの良さ、わかりやすさが求められがちですが、実際はわからないことだらけです。だからこそ面白いのですが、最初はもしかすると少し戸惑うかもしれません。学生さんには、まずは焦らず、正確な実験技量を身につけ、自分の頭で考えながらじっくりと研究に取り組んで欲しいと思っています。既存の情報にとらわれすぎることなく、自分の手で得た目の前のデータを大切にし、そのメッセージをきちんと読みとってみると、予想外の発見を得られるかもしれません。そういった発見の瞬間の喜びを是非経験してほしいと願いながら、サポートを行っています。

共同研究や産学連携への展望

匂い受容体情報を指標とした香り活用にむけて

 香り活用に興味はあるものの、いざとりかかろうとするとなかなか難しい、との企業様からのお声をよく耳にします。香り知覚に関する客観的評価基準がほとんどないこと、香りの感じ方に個人差があること、がネックになっていると思われます。私達は、個人差も含めたヒト匂い受容体セットについて、匂い応答パターンを取得できるアッセイ系を構築し、応答パターンと匂い知覚との関連性を調べております。その結果、少なくとも一部の匂いについては、応答パターンと匂い知覚との間に関連が示されることが明らかになりました。また、構築したアッセイ系を用いることで、着目した香りが、匂い受容体遺伝子の個人差による影響を受け得るかといったことを予想できるようになりました。今後研究をすすめ、応答受容体情報活用による香り知覚予測の有効性について、その適用範囲を明らかにするとともに、系の改善による運用性の向上を図りたいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  香り、受容体、培養細胞
キーワード2  :  香り活用