プロフィール

丸山 潤一

丸山 潤一

MARUYAMA Jun-ichi

専攻 応用生命工学専攻 Department of Biotechnology
研究室 微生物学研究室 Laboratory of Microbiology
職名 教授 / Professor
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一般の方へ向けた研究紹介

千年の伝統から未来の科学へ――麹菌が拓く新しい可能性

麹菌は、日本酒・醤油・味噌といった日本の伝統的な醸造食品の製造に欠かせない糸状菌(カビ)の一種で、和食の味を形づくる重要な存在です。千年以上にわたり日本人に育てられてきた麹菌は、食文化と深く結びついていることから、日本を代表する微生物として「国菌」に認定されています。それだけでなく麹菌は、酵素をはじめ有用な機能をもつタンパク質、天然化合物の生産にも利用され、近年では麹菌そのものを食用とするタンパク質源として注目されています。
しかし、長い歴史をもつ麹菌には、まだ科学的に明らかになっていない生命現象や能力が数多く残されています。私たちの研究室では、こうした未知の可能性を見つけだし、その仕組みを遺伝子・ゲノム・細胞レベルで解き明かす研究を行っています。さらに、最先端の「ゲノム編集」技術を活用することで、麹菌の潜在能力を引き出して新しい機能をもたせる研究にも挑戦しています。このような伝統と最先端が交わる麹菌研究は、新しい産業利用を切り拓くだけでなく、食料や環境、健康といった人類の未来にかかわる課題解決にも貢献する可能性を秘めています。

教育内容

日本独自の醸造文化を背景に、微生物学の魅力を学び、活躍できる人材を育成します

学部では、教養課程総合科目「微生物の世界」で麹菌に関する講義を分担し、農学部では「微生物生理学」の講義を担当して、微生物の魅力を幅広く伝えています。さらに、生命化学・工学専修3年生の学生実験では日本酒醸造実験を実施して、農芸化学ならではのユニークな学びを提供しています。日本独自の農学分野である「農芸化学」における、醸造を基盤とした日本のバイオテクノロジーの原点を学ぶことを目指しています。
研究室では、伝統的な醸造文化に根ざした独創的な微生物学研究を展開し、その成果を世界に発信することを目標としています。この環境のなかで、机上の学問にとどまらず、自ら課題を設定して解決する力、グループの他のメンバーと協働するコミュニケーション力、そして学会発表などを通じて成果を外部に発信する力を養っていきます。こうした経験を積み重ねながら、一人ひとりの能力を最大限に引き出し、将来、研究や社会で活躍できる人材の育成を目指しています。

共同研究や産学連携への展望

不可能を可能にする、次世代の麹菌・糸状菌のテクノロジー

私たちは、麹菌を中心とした糸状菌の基礎生物学的理解を深め、その潜在能力を解き明かすとともに、最新のバイオテクノロジー、特にゲノム編集とバイオインフォマティクスを駆使した応用研究を進めています。麹菌の機能開発はゲノム全体を大規模に作り変える合成生物学的育種が可能なレベルにまで達しており、このような従来の不可能を可能にする革新的な機能開発が、生命・食糧・環境における様々な問題の解決に直結する新たな展開が期待されています。
日本の伝統的醸造を支えてきた麹菌を含む糸状菌は、微生物資源として世界的に注目されています。かつて糸状菌は研究での取り扱いが難しく敬遠されがちでしたが、これまでに私たちは企業の方々との共同研究を通して研究技術を広め、その基盤整備に取り組んできました。今後も産学連携をさらに推進し、糸状菌の機能開発研究をなお一層加速させることにより、社会還元に貢献していきたいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

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キーワード

キーワード1  :  微生物、発酵、醸造、麹菌、糸状菌、細胞、遺伝子、ゲノム、多細胞生物、有性生殖、交配育種、物質生産、ゲノム編集、タンパク質、天然化合物
キーワード2  :  発酵、醸造、食糧、生命、環境