プロフィール
一般の方へ向けた研究紹介
「根」を含めた森林の生産能力をひも解く
森林生態系は植物の光合成活動を通じて、温暖化に関わる全球規模での炭素循環に大きな影響を与えます。森林樹木の生産動態を観察することで、吸収された炭素がどのように分配・固定されているのかを知ることができます。森林の生産能力を正しく理解するためには、地下部根系の生産動態の解明が課題となっています。
日本の主要な温帯林などを中心に、森林の生産量や生産フェノロジー(季節性)を多面的なアプローチを用いて観測・推定しています。森林地上部では、葉や幹・枝の生産動態を林冠の写真や樹木直径サイズの測定などから推定しています。一方、森林地下部では、細根(直径2 mm未満の吸収機能を持つ根)の生産動態をスキャナーなどの観察機器を用いて評価しています。野外観測を通じて、森林の生産能力に占める地下部の役割が非常に大きいことや、地上部と地下部の生産パターンに関係性があることがわかってきました。
多面的なアプローチを用いて、森林地上部地下部の生産能力を明らかにし、生産フェノロジーを通じて、樹木の炭素資源の分配や養水分資源の獲得のメカニズムに迫りたいと考えています。
教育内容
豊かな想像力で切り開く新しいビジョン
附属演習林での野外実習などを担当しています。教科書に載っていることだけでなく、実際にフィールドに出向き、自然の営みに触れることからも多くの学びが得られます。実体験は豊かな想像力につながり、課題解決に向けたアイデアや研究のビジョンを創出する上で重要な要素だと考えています。
学生の個性と自由な発想を尊重し、森林の生態学のみならず、森林の公益的機能や林業などの社会的課題に至るまで、様々な関心に対して学びをサポートしていきたいと考えています。
共同研究や産学連携への展望
森林の生産能力・炭素蓄積能力の定量評価
森林樹木の動態観測を通じて、生態系の生産能力を定量的に評価しています。特に観測が難しい森林地下部では、スキャナーやカメラを用いた根を含む土壌断面の観察が一つのアプローチとなります。しかし、野外での持続的な自動撮影システムの導入や取得した画像の自動解析技術の開発が課題となっています。最近では、技術者と協力し汎用性コンピューターを応用した撮影システムの開発を行っています。
全国規模の調査データを用いて、日本の森林の炭素蓄積能力を評価しています。森林の持続的な管理・保全を実現するためには、現在の森林の炭素蓄積量に加えて、将来の森林の状態についても予測を行うことが重要です。森林の将来を予測するためには、林齢にともなってどのように森林が発達するのか、また気候変動で成長量はどのように変化するのかを理解する必要があります。様々な地域の実測データを収集し、森林の将来予測に努めています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
関連記事
温暖化を防ぐスギのホントのチカラ
森林は、たくさん伐ってたくさん植えたら、たくさん炭素を蓄える
キーワード
キーワード1 : 森林、樹木、生態系、炭素、根系、細根、フェノロジー
キーワード2 : 森林資源、純一次生産、炭素動態、炭素固定、気候変動