プロフィール
専攻 |
アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニット
Agricultural Bioinformatics Research Unit
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研究室 |
生産生態学研究室 (協力講座)
Institute for Sustainable Agro-ecosystem Services
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職名 |
准教授 / Associate Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
野生イネの強靭さで持続可能な農業を実現するイネを作る
ハーバー・ボッシュ法による窒素の化学合成が可能になってから、人類は化学肥料を利用することによって食糧の生産性を飛躍的に増加させてきました。80億人を超える人類は化学肥料に支えれられてるのです。一方で、化学肥料を大量に使用する近代農業は自然が持つ物質循環のバランスを大きく変化させ、地下水の汚染、海域の富栄養化、地球温暖化など、現在我々が直面している環境問題の原因となっていることが分かっています。地球環境を顧みない今のままの農業を続けることはできないのです。我々人類は持続可能な食糧生産システムを実現しなければなりません。
アジアの主食である米を作るイネという植物は、約一万年前に古代人により栽培化されましたが、自然にはイネの祖先や栽培化されていないイネの仲間が存在します。それら植物は野生イネとよばれ過酷な自然環境の中で生きているのです。野生イネには栽培イネが持っていない「強靭さ」があります。我々はマルチオミクス解析という手法で野生イネの持つ「強靭さ」を栽培イネに付与する研究を行なっており、これまでに少ない肥料でもよく育つイネ、温度や光のストレスに強いイネなどを開発しています。次世代の農業に必要なことは沢山あります。私はイネを改良することでこれからの農業に貢献したいのです。
教育内容
フィールドインフォマティクスで次世代農業を推進する
アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニットの開講科目、フィールドインフォマティクスを担当しています。フィールドインフォマティクスでは、近年急激に発展しているドローンや環境センサーをはじめとする種々の観測装置によって圃場全体から生成・収集されるビッグデータや、分析機器の高度化により増加している圃場で栽培されている作物を対象としたオミクス情報 (ゲノム・トランスクリプトーム・メタボローム・イオノームやマイクロバイオームなど) を活用し、育種や生産の効率化・最適化を実現するための理論や技術をハンズオン形式で解説しています。
スマート農業に代表される農業の情報化は情報化社会発展の必然ではありますが、現在、これまでの「勘」と「経験」の農業から「AI」と「データ」を活用する次世代農業へとイノベーションを行う過渡期にあります。アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニットは、農学分野におけるデータサイエンス教育を通じた農学研究の発展と、まさにこれから始まる次世代農業に携わる人材の育成を推進しています。
共同研究や産学連携への展望
化学肥料を使わずに収量性が良いコメ生産を実現する
世界的に見られる健康な食生活や持続的な生産と無駄のない消費への関心、ESG投資市場の拡大や欧米諸外国の環境や健康に関する戦略策定などから、日本の食料・農林水産業においても世界的な動向に対応することが急務となっています。農林水産省は、「みどりの食糧システム戦略」を策定し、 2050 年までに食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーション実現することを掲げています。そのうち、作物生産に関する項目では、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の30%削減、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%に拡大、などが2030年までの中期目標となっています。
コメの品種開発・生産・加工・流通・販売 (輸出及び現地生産) ビジネスの市場規模は 2020年に 379億円、2025年には 733億円 (予想) と大きく拡大することが見込まれコメ生産の需要は高まっていますが、化学肥料を低減したコメ生産は実現していません。我々は日本で最も生産されているコメの品種であるコシヒカリを改良し、化学肥料が少なくとも収量性が高いイネを開発しています。現在、農業試験場や農家の協力のもと、開発したイネによる化学肥料を利用しないコメ生産の実証実験を行なっています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 植物、イネ、野生イネ、フィールドインフォマティクス、バイオインフォマティクス、マルチオミクス、イオノーム、元素、ミネラル、肥料、環境ストレス
キーワード2 : 気候変動、化学肥料、隠れた飢餓