プロフィール

大黒 俊哉

大黒 俊哉

OKURO Toshiya

専攻 生圏システム学専攻 Department of Ecosystem Studies
研究室 緑地創成学研究室 Laboratory of Landscape Ecology and Planning
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

持続可能な緑の再生を目指して

 私はこれまで、ランドスケープエコロジーという俯瞰的・統合的な研究アプローチにより、砂漠化・土地劣化プロセスの解明と植生回復技術の開発に関する研究や、里山の生物多様性保全や生態系サービス評価に関する研究に従事してきました。
 最近とくに力を入れているのが、「土地劣化中立性(Land Degradation Neutrality: LDN)」の達成に向けた「持続可能な土地管理(Sustainable Land Management: SLM)」に関する研究です。SLMとは、適切な土や水の管理によって、持続的な土地生産、生態系の保全、生計と人間の福利の向上を同時に達成する技術や仕組みを包含した概念です。土地の劣化状態を改善し、SLMを構築するためには、適切な土地ポテンシャルの評価と、現地に適用可能な土地管理技術の開発が欠かせません。現在、モンゴルやエチオピアなどで、砂漠化土地の緑化技術の開発や、持続可能な放牧地管理技術の開発を通じて、「どの場所に、どのような技術の組み合わせをどの程度重点的に適用すれば最大の効果と持続性が得られるか」についての処方箋づくりを行っています。
 今後も、地球規模での環境変動や、人口減少といった社会構造の転換に対応した、緑地環境の新たな保全・創出技術の開発を通じ、自然共生社会という新たな社会像の発信・提案を行っていきたいと考えています。

教育内容

エコロジーとプランニングの視点からランドスケープを理解する

 私たちの生存と豊かな暮らしを支える「みどり」は現在、地球温暖化や砂漠化など、地球規模の環境問題によって危機に瀕しています。一方、私たちの暮らす都市や農村では、人口減少や高齢化など社会構造の大転換に対応した、人と「みどり」の新たな関係が求められています。人間活動と自然環境の調和したみどり豊かな社会=自然共生社会を実現するためには、グローバル・ローカル両方からの視点と問題解決能力が必要です。
 緑地創成学研究室では、人と自然が共存可能な、健全でうるおいのある緑地環境の形成をめざし、都市の緑から、里山、湿潤熱帯、乾燥地まで、多様な緑地空間を対象に、その生態的機能やアメニティ機能を生態学・計画学的視点から学ぶことを通じて、緑地環境の修復・保全・創出に貢献できる人材を育成することを目標としています。そのため、ランドスケープエコロジーや緑地計画学を基礎としつつ、都市・農村計画学、環境情報学、保全生態学など関連する幅広い分野との学融合を目指しており、高度な専門知識とともに、社会状況に対する的確な問題意識と総合的な思考能力を身につけるためのカリキュラムを用意しています。

共同研究や産学連携への展望

土地劣化中立性の達成に向けた持続可能な土地管理

 全陸地の4割を占め、かつ全人口の3分の1の人々が暮らす乾燥地において、砂漠化を防止しつつ持続的な農業・畜産活動を維持していくためには、緑化による荒廃防止と共に、生態系サービスの安定的な提供が可能となるような、生態系機能の再生と、それらの持続的管理が不可欠です。緑地創成学研究室では、砂漠化した土地の生態系再生と持続的な生物資源利用の両立が可能となるような環境修復の指針を提示することを目指しています。「植生の回復力が高い場所はどのような規則性で分布しているのか?」、「環境修復の鍵となる植物はどのような環境適応力を持っているのか?」、「様々な緑化技術はどのようなメカニズムで環境修復を促進するのか?」ということを、リモートセンシング、環境制御実験、野外実験、モデリングなどの手法を駆使して明らかにすることで、「土地劣化中立性(Land Degradation Neutrality: LDN)」の達成に向けた「持続可能な土地管理(Sustainable Land Management: SLM)」についての科学的な根拠を示すことができると考えています。
 乾燥地の緑化や環境保全・修復を通じた地域社会貢献、並びに乾燥地における持続的な農業開発等に関心のある自治体、企業、団体等に対し、コンサルティングや共同研究の提案を行うことが可能です。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  ランドスケープ、植物、植生、社会生態システム、砂漠化、土地劣化、土地劣化中立性、持続可能な土地管理、緑化、生物多様性、生態系機能、生態系サービス、乾燥地、里山、放棄水田
キーワード2  :  砂漠化、土地劣化、気候変動、生物多様性、食糧問題、過放牧、土壌侵食、耕作放棄、管理粗放化、オーバーユース、アンダーユース