プロフィール
一般の方へ向けた研究紹介
植物がつくる小さな分子が秘める力
植物は、自分でつくり出す小さな「分子」を使って、自分の体の成長を調節したり、土の中の生き物と会話をしたりしています。私たちが研究している「ストリゴラクトン」という分子もそのひとつです。ストリゴラクトンは、植物の枝分かれを抑える“植物ホルモン”として働くだけでなく、根から分泌されて菌や周囲の植物に信号を送るという、不思議で多機能な役割を担っています。
しかし、この性質が農業にとって大きな問題を引き起こすこともあります。例えばアフリカでは、ストリゴラクトンに反応して発芽する「根寄生雑草」が、主食となるイネやトウモロコシに寄生して収穫量を大幅に減らしています。これは食糧問題に直結する深刻な課題で、世界で約3億人の人々の生活に影響していると考えられています。
私たちの研究室では、植物が生産する分子がどのように作られ、どのように働いているのかを分子レベルで明らかにすることを目指しています。その知識を活かし、寄生雑草の被害を減らしたり、作物の形を調整して育てやすくしたりする新しい農業技術の開発に取り組んでいます。小さな分子のはたらきを理解することが、将来の大きな社会課題を解決するカギになるのです。
教育内容
植物分子を探究し、生命科学と社会をつなぐ人材を育てる
私たちの研究室では、植物が生産する分子、とくに植物ホルモンの生合成や機能を分子レベルで解析し、基礎科学から農業応用までをつなぐ研究教育を行っています。植物ホルモンのひとつであるストリゴラクトンは、枝分かれ抑制を担うだけでなく、根寄生雑草の発芽や菌根菌との共生を誘導するシグナル分子としても知られています。この多面的な機能を理解するには、生化学・分子生物学・分析化学といった幅広いアプローチが不可欠です。
当研究室では、こうした多様な手法を実際に活用しながら、学生が自ら課題を設定し、解決に取り組む力を育むことを目指しています。具体的な実験内容でいえば、遺伝子改変植物を用いた表現型解析、組換え酵素による生化学実験、質量分析計を活用した代謝物同定などが挙げられます。これらを通じて、研究に必要な実践的スキルを身につけることができます。学部生は基礎的な研究方法を習得しつつ卒業研究に挑戦し、大学院生は独立して研究計画を立案・遂行し、学会発表や論文執筆を通じて成果を社会に発信する経験を積みます。
分子レベルの理解を出発点に、植物の生理機能を明らかにし、農業上の課題解決に橋渡しできる研究を共に推進することを目指しています。
共同研究や産学連携への展望
植物代謝制御による革新的農業ソリューションの創出
当研究室ではこれまでに、ストリゴラクトン生合成に関与するシトクロムP450や、新規触媒活性を有する酵素の機能を解明し、生合成機構の理解を大きく前進させてきました。その成果として、作物が分泌するストリゴラクトン分子種を人為的に改変できる基盤技術を構築しています。こうした研究により、生合成制御を通じて農業上の重要課題の解決を目指しています。
具体的には、寄生雑草の発芽を抑制する一方で、共生菌根菌との相互作用や作物自身の生育制御を維持するという「選択的な代謝制御」の可能性が見えてきています。今後は、この知見を応用し、ストリゴラクトン生合成に関わる酵素や経路を標的とした阻害剤などの小分子化合物の開発と、分子育種による品種改良技術の開発を産学連携の枠組みで進め、持続可能な農業の実現に貢献していくことを目指しています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 植物、植物ホルモン
キーワード2 : 気候変動、食糧問題