プロフィール

一般の方へ向けた研究紹介

海の“つながり”を野外調査と分子から読み解き、海との共存・共生へ

気候変動により、海の中の生態系は劇的な変化が起きています。もっと直接的な人の活動もまた、サンゴの白化やサンゴを食べるオニヒトデの大量発生など、沿岸生態系は数十年単位の変化にさらされています。私たちの研究では、サンゴやオニヒトデなどの幼生(子供)が海流に乗って移動する“海域間の結びつき”を、遺伝解析(集団ゲノミクス)と海洋数値モデル・生物統計モデルなどを統合して可視化し、いわば保全に重要な“中継基地”となる海域を特定したり、サンゴを食べるオニヒトデの生態を明らかにしたり、遺伝子解析によって保全の単位である種の境界を明らかにしたりすることです。
さらに、温帯域がサンゴのレフュージア(避難所)として機能しうる条件や、回復力を左右する遺伝的多様性・繁殖期・環境条件の組合せを評価し、保全・再生に向けた科学的根拠を提示します。さらに、最近は、サンゴなどの海洋生物が感じているストレスを海水から検出する技術の開発にも挑戦しています。
研究成果は保全計画や観光・教育プログラムへ“翻訳”し、地域の皆さんと共有しながら、実証フィールドで仮説を確かめていきます。科学の知見を開かれた形で届け、人と海の生態系が共生・共存できる方法を模索しています。

教育内容

フィールド×分子生態×データ科学で“現場も見ながら、分子で目に見えない仕組みや繋がりも明らかにする”力を育成

講義と実習を組み合わせ、現場で観て環境問題について考える力と、分子データで目に見えない現象を解析する力を同時に鍛えます。サイエンスダイビングを含む海洋調査、試料採取に加え、DNA抽出からシーケンス、RNAを用いた集団遺伝解析、系統解析、発現遺伝子解析までを段階的に学びます。さらに、環境データ・海洋データの取得・データ解析により仮説検証を行っていきます。
地域での保全に関わるステークホルダーとの対話も重視し、現場で役立つ総合的な研究者基礎力を身につけます。加えて、遺伝子データの整形・可視化・統計解析、報告書や論文の執筆、英語でのプレゼンテーションも重視しています。潜水や船上作業の安全管理、研究費の管理、野外調査の基本を楽しく体系的に学びます。小さな成功体験を積み重ね、科学的思考と実装力を併せ持つ人材を育てます。研究者以外の道を進まれる人でも是非、海ならではの難しさ、人との共生にむけて何が大切かを知り、考えていける人材を育成していきたいです。

共同研究や産学連携への展望

指標・ツールで“持続可能な海”の実現へ

企業・自治体・漁業者・ダイビングショップなどと連携し、海洋・時に陸水の生物多様性保全と利用の両立に向けた実装研究を進めています。今実際に海洋生物への毒性試験なども行っています。今行っているような遺伝的多様性や生活史の特性に基づく保全の在り方を考える、気候変動によるレジームシフトの検出としてサンゴと海藻の競合・共存する海域の長期モニタリング、オニヒトデ大量発生の伝播やサンゴ捕食メカニズムと効率的な管理方法について、観光や環境影響のサンゴの健康度の診断ツールの開発などは連携しやすいです。
今後、保全効果の“見える化”や、気候変動シナリオを踏まえた適応的管理に役立つ基礎情報の提供を目指していきます。さらに、長年保全に取り組んでいる現場の知恵やダイビングなどによる市民科学と科学知をつなぎ、保全のための合意形成を後押しできればと考えています。地域特性に応じた“共創”を重視し、海を未来世代へ手渡すための実効性ある仕組みや技術を共に設計していきたいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

関連記事

沖縄本島東海岸で新種サンゴを発見 ――リュウキュウサンゴと命名!――

キーワード

キーワード1  :  サンゴ、幼生分散、コネクティビティ、集団ゲノミクス、遺伝的多様性、オニヒトデ、温帯レフュージア、海洋保護区、黒潮、宝石サンゴ、深海、共生生物、気候変動、北上、レジームシフト、RNAseq,環境DNA、環境RNA
キーワード2  :  気候変動適応、沿岸管理、生物多様性の保全と利用、サンゴ礁生態系保全