平野および中山間地域における農地の転換パターン:過疎化する日本の農山村における地理的加重回帰分析を用いた時間的比較による要因の分析
発表のポイント
- 松阪市における農地利用の変化において、地域の地理的環境条件を考慮した要因を特定するための解析を行いました。
- 農業生産活動を支援するための補助金制度などが農地の存続に貢献する可能性が示されました。
- この研究は、地域研究として特に農地変化の要因に焦点を当て、人口減少と高齢化の問題を抱える日本の他地域や他の国々の対策に役立てられると考えられます。
発表内容
日本の農山村人口の大幅な減少と高齢化は、これらの地域の農業の維持に深刻な影響を与えており、農地の放棄とその後の他の土地利用タイプへの転換をもたらしている。ほとんどの都市や村では農地面積が減少している現状がある。農林業の生産と環境保全の両立を模索するプロジェクトの一環として、旧和歌山街道沿いに位置し、櫛田川流域の三重県松阪市の飯高地区における土地利用の変化を定量化し、農地面積の変化に影響し得る要因を地理的重回帰分析手法による解析を森林科学専攻の祖父江 侑紀氏らが行った。この解析手法を使用することで、最も農地の変化と関係性の高い要因(標高や人口の変化率など)を場所ごとに推定することができる。その変化率や潜在的な要因は地理的位置によって異なるのに加え、補助金制度などの政策も寄与している可能性が示唆された。平野部で転用された農地のうち、ほとんどは住宅地に転用されたが、山間地域の農地は高い割合で森林地や荒地に変わった。また、山間地域の農地は、より標高が高い場所に位置する農地に比べ、標高が低い場所に位置する農地に転用が多い傾向が見られた。このことは、直接支払制度などの補助金制度により、補助金の対象となる山間地域の農地などは維持しやすく、補助金のない山間地域の境界域にある農地が転用されやすい可能性を示していると考えられた。
図1.松阪市の主要な土地利用比率の変化。農地が13.4%減少したほか、建物用地、荒地が11.9%、3.7%増加するなどの変化が見られた。
図2.農地の変化。農地からの転用先をマップ上に示したもの。平地(松阪市東部)では多くが建物用地へ、山間地(松阪市西部)では森林や荒地に変わった箇所が多いことがわかる。
JST・RISTEX 科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム 「農林業生産と環境保全を両立する政策の推進に向けた合意形成手法の開発と実践」(https://www.jst.go.jp/ristex/stipolicy/project/project40.html) (代表 香坂玲)および科研費(JP23KK0198, JP23H01584, JP23H03605, JP22H03852, JP21K18456, and JP17K02105)の一環として実施された
発表者
東京大学大学院農学生命科学研究科 森林風致計画学研究室
祖父江 侑紀 特任研究員
香坂 玲 教授
発表雑誌
- 雑誌
- Environmental and Sustainability Indicators
- 題名
- Conversion Patterns of Agricultural Lands in Plains and Mountains: An Analysis of Underpinning Factors by Temporal Comparison with Geographically Weighted Regression in Depopulating Rural Japan
- 著者
- Yuki Sofue, Ryo Kohsaka* (*責任著者)
- DOI
- 10.1016/j.indic.2024.100346
問い合わせ先
東京大学大学院農学生命科学研究科 森林風致計画学研究室
特任研究員 祖父江 侑紀
Tel:03-5841-5218
E-mail:kohsaka.lab<アット>gmail.com
kohsaka<アット>hotmail.com <アット>を@に変えてください。
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