サプライシェッド・アプローチは グローバル・サプライチェーン に適用できるのか:自然資本評価のためのサプライシェッドとランドスケープのアプローチの統合
発表のポイント
◆TNFD・環境デューデリジェンスの潮流を背景とした企業のサプライチェーン自然資本評価における最大の障害であるトレーサビリティ課題を、サプライヤー変動/物理的混合/サプライヤー情報の非開示の3類型で整理
◆サプライヤー単位の完全追跡が難しい状況を踏まえ、移行的解としてのサプライシェッド・アプローチの導入を提案
◆サプライシェッド×ランドスケープのハイブリッド枠組みに基づき、リモートセンシング・環境DNA等の客観データによる広域スクリーニングから、高リスク領域のサプライヤー精査へつなぐ二段階プロセスを提案
◆実装に向けた研究論点として、責任配分とダブルカウント回避、第三者による調整主体、EUDR等を踏まえた低リスク地域でのリスクに応じた負担設計を提示
概要
グローバル・サプライチェーンにおける自然資本評価は、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)やTNFD、EU森林破壊防止規則(EUDR)等を背景に、企業にとって重要性を増している。一方で、個別サプライヤーを前提とした評価は、サプライヤーの流動性、原材料の物理的混合、サプライヤーの情報非開示といった要因により、実務的・経済的制約が大きい。
本研究は、これらの課題に対し、サプライシェッド・アプローチを自然資本評価へ応用し、ランドスケープ・アプローチと統合したハイブリッド枠組みを提示する。地域単位でのスクリーニング評価に、リモートセンシングや環境DNA(eDNA)などの空間的・客観的データを組み合わせることで、地理的妥当性とコスト効率の両立を図る点に特徴がある。
本研究は、このハイブリッド枠組みを、詳細なサプライヤー評価へ移行するための移行的手法として位置づけ、企業の自然関連リスク評価および将来の規制設計に対する学術的示唆を提供する。

図1. サプライヤーアプローチ、サプライシェッドアプローチ、ランドスケープアプローチの関係性、およびサプライチェーン課題への対応
サプライシェッドアプローチとランドスケープアプローチは、統合的に実施することで相互に補完し合うことができる。
論文情報
掲載誌:Environmental Research Communications
区分:展望 Perspective
タイトル:Applicability of Supply Shed Approach in Global Supply Chains: Integrating Supply Shed and Landscape Approaches for Natural Capital Assessment
著者:中尾 圭志・香坂 玲
発表日:2026年1月
DOI: https://doi.org/10.1088/2515-7620/ae3d83
研究助成
本研究は、科研費(JP22H03852、JP23H01584、JP23H03605)、JST共創の場形成支援プログラム(JPMJPF2110)、環境省による環境再生保全機構の環境研究総合推進(JPMEERF20241M03)の一環として実施された。
関連リンク
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問い合わせ先
東京大学大学院農学生命科学研究科
教授 香坂 玲(担当:中尾 圭志)
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E-mail: kohsaka.lab<アット>gmail.com
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