抹茶で花粉症も一服⁉
―抹茶を飲むことでくしゃみを抑えられる可能性―
本研究成果のポイント
抹茶を飲むことでくしゃみが抑えられる可能性と、そのメカニズムを明らかにしました。
概要
東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医衛生学研究室の関澤 信一准教授らの研究グループは、広島大学 原爆放射線医科学研究所(疾患モデル解析研究分野)の神沼 修教授、福島県立医科大学 癌集学的治療地域支援講座の中嶋 正太郎准教授、カトリカ・デ・ラ・サンティシマ・コンセプシオン大学のマリベト ガンボア助教、日本医科大学大学院頭頸部・感覚器科学の後藤 穣大学院教授らと共同で、抹茶がアレルギー性鼻炎におけるくしゃみ応答を抑制する可能性を明らかにしました。
本研究では、マウスアレルギー性鼻炎モデルに抹茶を飲ませることで、その病態に影響を与えるかを調べました。その結果、アレルギーで誘発されるくしゃみ反応が、抹茶によって抑制されました。抹茶は、IgE抗体の産生やマスト細胞、T細胞の反応、腸内細菌分布に大きな影響を与えませんでしたが、脳内のくしゃみ反射経路における神経活動を減弱させることがわかりました。この研究成果は、広島大学から論文掲載料の助成を受け、Nature系の国際学術誌『npj Science of Food (Q1)』に掲載されました。
背景
現在、多くの人が花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎に悩まされています。その人数は国民の約5割にものぼり、睡眠障害や集中力低下などの原因となって、労働生産性の低下も引き起こすといわれています。
対処法としては、抗アレルギー薬などを内服する対症療法や、長い年月をかけてアレルギー反応を起こしにくくするアレルゲン免疫療法といった根本的治療はもちろん、花粉を家に持ち込まないように洗濯物を室内に干したり、空気清浄機を活用するなどの身近な対策も考えられます。
このような身近な対処法の一つとして、お茶を活用するものがあります。お茶には健康に良いとされる多くの成分が含まれており、それを飲むことで鼻炎病態が改善されたとするヒトでの試験結果も報告されています。しかし、お茶がどのようにしてアレルギー鼻炎の症状を改善するのか、これまで明らかにされていませんでした。
研究成果の内容
今回の研究では、マウスのアレルギー性鼻炎モデルを用い、お茶の成分を最も効率的に摂取できる抹茶を投与することで、その病態に与える影響を調べました。その結果、感作したマウスに抗原を投与することで誘発されるくしゃみ反応が、抹茶の投与によって抑制されました(図1)。アレルギー性鼻炎の発症には、IgE抗体(注1)やマスト細胞(注2)、T細胞(注3)などが関わっていますが、マウスモデルでの解析では、IgE抗体の産生やマスト細胞を介した反応、T細胞の反応などは、抹茶による影響を殆ど受けませんでした。また抹茶を投与することによって、腸内細菌の分布も大きく変化しませんでした。そこで、脳内のくしゃみ反射関連神経の活動を調べてみたところ、くしゃみ誘発物質であるHistamine(注4)の投与によって活性化されたくしゃみ反射関連神経の活動が、抹茶の投与により減弱することがわかりました。
図1:感作マウスに抗原(OVA)を点鼻することで起こるくしゃみ応答に対する抹茶の効果を調べました。抗原点鼻により溶媒(PBS)点鼻時よりもくしゃみ回数の増加がみられましたが、その反応は抹茶を投与することにより半分くらいまで減弱しました。
図2:くしゃみ反射関連神経の活動に対する抹茶の効果を調べました。Histamineを点鼻することにより、くしゃみ反射関連神経の活動が高まりましたが、その反応は抹茶を投与することにより減弱しました。
今後の展開
抹茶を飲むことによって、アレルギー性鼻炎の発症や病態に関わる免疫応答は影響を受けませんが、くしゃみ反射関連神経に作用してその反応が減弱する可能性が明らかになりました。この成果は、日本だけでも6,000万人くらいいると言われている、アレルギー性鼻炎の患者さんの症状改善に役立つかも知れません。今後は、ヒトが通常摂取する量で十分な効果が得られるかなど、実際に患者さんのデータ集積を行うことが重要となります。
論文情報
論文タイトル:Matcha alleviates sneezing response in a murine model of allergic rhinitis
著者:Sawako OGATA, Naoto UDA, Kento MIURA, Uyanga ENKHBAATAR, Norimasa YAMASAKI, Naohisa HOSOMI, Akio MORI, Ryo HASEBE, Naoaki MATSUDA, Fumiko HIGASHIKAWA, Maribet GAMBOA, Shotaro NAKAJIMA, Noriko KITAMURA, Minoru GOTOH, Shin-ichi SEKIZAWA, and Osamu KAMINUMA*
*:責任著者
DOI :10.1038/s41538-026-00777-9
用語解説
注1)IgE抗体:アレルゲンを検知してマスト細胞に伝える「センサー」の役割を持つ免疫タンパク質。
注2)マスト細胞:IgE抗体からの信号を受けると、ヒスタミン等の刺激物質を放出してアレルギー症状を引き起こす細胞。
注3)T細胞:免疫全体をコントロールする司令官であり、IgE抗体の産生を促したり攻撃の指示を出したりするリンパ球。
注4)Histamine:マスト細胞から放出され、神経を刺激したり血管を広げたりすることで、くしゃみ・鼻水などのアレルギー症状を直接引き起こす化学物質。
お問い合わせ先
【研究に関するお問い合わせ先】
東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻獣医衛生学研究室
准教授 関澤 信一
Tel:82-257-1556 E-mail:ssekizaw@g.ecc.u-tokyo.ac.jp
【報道に関するお問い合わせ先】
東京大学 大学院農学生命科学研究科・農学部
総務課総務チーム広報情報担当
Tel:03-5841-5484 E-mail:koho.a@gs.mail.u-tokyo.ac.jp

